連日、アベノミクスに沸く経済ニュースでも
話題になる回数が増えてきた。
長年、政権党の票田としてのみ大切に扱われてきた農業の
大きな転換期だ。
今や日本経済の再興の起爆剤になるかのごとく、
本当の意味での主役としてその存在価値が見直されつつある。
大きな視野で見た場合、農業に代表される第一次産業は
21世紀の有望産業であり、
世界の安定的な維持発展のためには
もっとも重要な産業のひとつであることは明白だ。わずか10年前を振り返ってみても、
今、農業が話題になる光景には驚くものがある。
ITが超有望産業として注目を浴びていた頃、
農業ビジネスの将来性を語り、本気で農業ビジネスに取り組む
経営者や起業家にエールを送っていた人は
どれだけいただろうか?
いつの世もそうだが、未来を正しく示唆する人の意見や考えは、
夜明け前は常に少数派で無視されがちだ。
今、有力な経済新聞でも農業に関する話題は
毎日掲載されているといっても過言ではない。
TPPは言うまでもなく、減反政策の方向転換、
農協のあり方の議論、 政局も相まって、話題に事欠かない。
しかし、農業に関わる利害関係者のそれぞれの
立場や主張を満足させられる方策やビジネスモデルの構築は
国内だけに目を向けている限りは至難の業だ。
さまざまな規制やもたれあいでがんじがらめ。
打開策として、日本はアジアとの連携による
農業の再興を目指すべきだと強く思う。
今年から農水省の農業再生に関する政策も
変化が見られるようになった。
3年前の拙著「アジアで農業ビシネスチャンスをつかめ!」
でも書いたが、 まずは、日本の優れた農産物を海外に売る。
これがまず一義だ。 今年になってから、国の補助金や支援策も
今年度から数多く登場してきた。
それにつれて、日本の優れた農産物を海外に販売する動きが
活発になってきた。
これこそ大歓迎だ。
リンゴが中国の富裕層に高く売れていることは
以前から有名な話。
日本の安心で安全で美しくておいしい野菜や果物。
車やバイク、健康食品などに対する日本ブラントへの
信頼感と相まって、日本の野菜や果物は価値が相当高い。
ひとつの大きなブームになりつつあるが、
ブームで終るのではなく日本の貴重な輸出産業として
育って欲しい。
日本の価値のある商品が海外で売れていく。
これは単に商売繁盛という意味だけでなく、
もっと重要なことがある。
今の日本の農業は、就職する側から見たら
残念ながら魅力的でない。
とりわけ、農業離れが顕著な現代、
農業に従事する人の収入を高くすることが、
農業従事者を増やすためには必要だ。
安部首相も就任当時、農家の所得を3倍にすると宣言した。
これは本当に頼もしい発言だが、
本気で実現するにはハードルが高すぎる。
今の日本の農業を取り巻く現状を勘案すれば、
不可能に近いことは理解できる。
どういう背景、思惑で政治のリーダーが
発信したかは窺い知れないが、
農家の所得を3倍にできるかどうかは別として、
農家の所得はもっと高くあるべきである。
わかりやすく説明すると
『安心で安全で美しくておいしい、しかも健康に良い』
こんな世界にも誇れる商品を安く買いたい消費者が
大半の国では、商売として成立しない。
消費者だけの問題ではないが、
商品価値が世界に誇れる高いレベルなのだから、
関係者が皆、高く売ることを一義に考えるべきなのだ。
とはいえ、一朝一夕では改革できない。
実際、今までの日本の農家は販売に関しては他人任せであった。
農協を筆頭にがんじがらめの商品流通の仕組みができていたが、
それゆえに、せっかく自分達が丹精こめて作った商品を
高く売ったり、ファンを拡大することには
関心を持っていなかった。
商売の原点に返って、価値のあるものが高く売れる。
↓
収入が増える。
↓
魅力的な職業になる。
こういう好循環を繰り返しながら、
農業産業全体の魅力が高まり、
ビジネスとしても高収益の可能性が見えてくる。
これからの地球規模での食糧危機から考えて、
何よりも、社会的意義は高い分野である。
魅力的な産業に育つ条件は揃っている。
こういう現状の中で、私が声を大にしたいのは、
「主役は農産物を作る農家」ということ。
仮に農業ビジネスに参入した企業の経営者が
儲けることに長けていても、
主役は農作物を作る人たちなのである。
最近のメディアの情報や
農業ビジネスに関わる人の話題の中心は、
どうも「誰が作るのか」という視点が欠けていると思う。
人口減少の日本、農業に限らず労働者不足は深刻だ。
アジアと共存して農業を再生するしか道がないのは
誰が見ても明らかなのである。
今回から、何回か継続して農業ビジネスをテーマで
ブログを書きたいと思う。
次回、タイで十数年前から農業ビジネスに取り組んで
大成功しているオーガニック農業ビジスネスを
実践しておられる大賀さんを話題にしながら、
日本の農業が海外と連携して成功する手がかりを
探りたいと思う。
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