海外に新たなマーケットを求めて活発に動き出している。
その背景には東南アジアが注目されだしたことにあるだろう。
とりわけ、数年前はアジアの進出先としては
優先度がまるで低かったベトナムがにわかに脚光を浴びている。
国内マーケットが人口減少とともに縮小するのだから、
近隣のアジアに向かうのは経営者の視点から考えれば、
自然の流れともいえる。
しかし、日本企業は韓国や台湾や中国、
そして欧米などのライバルから見れば、動きが相当に遅い。なぜ動きが遅いのか?
要は、まだ“ぬるま湯の茹で蛙”状態から
抜け出せていないからだ。
マーケットが縮小する危機が目の前に迫っているにもかかわらず、
日本は世界でも有数の豊かな国である。
少子化に対する対応も遅れた。
日本は後進国、新興国から見れば、豊かでとても居心地の良い国だ。
だから、頭では理解しているが、
そんな豊かで居心地の良い日本からなかなか出ることができない。
日本に比べて、もともと経済力や国力で余裕のなかった
韓国などと比べるととてもわかりやすい。
東南アジアという世界が注目する将来超有望なマーケットだけで
考えても、すでに韓国は圧倒的な存在感を示している。
ベトナムやタイ、カンボジアなど、日本企業にとって
今後進出候補国に挙げられる国々でも、
韓国が随分前から現地のローカルビジネスに喰い込んでいる。
日本人が、これらの国を訪れる度に
日本の存在感の“無さ”に気づき、ショックを受け、
日本に帰っていく姿を何度も目にしている。
比較的親日で知られているタイですら、
すでに韓国勢が子供たちの心を掴んでいる。
ドラマやアニメ、ファッションなどを巧みに
マスメディアを使い、浸透させる。
タイの子供たちがこのまま大人になったら、
自然と韓国のファンとなり、大きな購買力へと成長することになる。
現状ではその可能性が高い方向に進んでいる。
日本人としては忸怩たる思いである。
新規ビジネスに挑戦する際に「稼ぐ」という視点で考えてみると、
短期的な視点と長期的な視点の2種類に大別することができる。
私は農家出身なので、『刈り取り型のビジネス』か
『種まき型のビジネス』で考えることが多い。
農業は種まきから始まって、丹念に育て実ってから刈り取る。
しかし、世の中のビジネスはすべてがこういうスタイルではない。
儲かりやすいのは、刈り取り型のビシネスであり、
どうしても先進国はこちらに走る。
例えば、国内でいえば、人材紹介ビジネスは
基本は刈り取り型ビジネスである。
どこかの会社が投資して育てた人材を、
言葉巧みに転職市場に誘い出す。
もちろん、経済全体から見たら、人材の流動化、
企業の新陳代謝などメリットは当然あり、必要なビジネスに違いない。
しかし、これをやりすぎると誰が人材を育てるのかという
子供でも思い浮かぶ疑問に突き当たる。
企業は人材の奪い合いに明け暮れる。
育てるということを忘れて、だ。
実際、外資系が殺到する新興国ビジネスでは
これは深刻な問題である。
日本のようにある程度、成熟した社会であれば、
流動化するに値する人材はそれなりに育っているだろう。
それなりの経済発展の歴史があれば自然の摂理ともいえる。
しかし、新興国などのようにビジネスが未成熟な社会で
人材紹介のようなビジネスを先行させると、
育てることよりも先に、他人の畑で実りかけている人材を
収奪にいく発想が先に立つ。
特に、人材育成や活用の観点で考えれば、
日本の現地法人の責任者は中長期の視点で見る人が多いので、
日本以外の外資企業に高値で人材を
根こそぎ持っていかれるケースが多くなる。
アジアのどこへ行っても共通の課題である。
ビジネスは長期的な要素だけ考えても成り立たない。
しかし、目先の事ばかりではもっと成り立たない。
日本はまだ、韓国などと比べたら経済面も余裕のある国である。
東南アジアなどの海外での貢献のあり方、
ビジネスにおける共存については、
韓国などと違う土俵で勝負するのが良いと思っている。
BOPビジネスという言葉が数年前から一般的に広まった。
種まきビジネスの典型ともいえるだろう。
デジタル大辞泉の解説を引用しよう。
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base of the economic pyramid の略。
低所得層を対象とする国際的な事業活動。
民間企業と開発援助機関が連携し、収益を確保しながら、
貧困層の生活向上など社会的課題の解決に向けて貢献する。
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BOPというと、一見、テーマが大きく
政府や大企業にしかできない領域のように思ってしまう。
なぜなら、貧困層に対して、彼らの生活の改善や
現地の環境にあわせてビジネスの育成などを主たる目的とするので、
企業経営の観点からいえば、先行投資が大半を占める。
この取り組みのリターンは、発展途上地域への貢献や
地球全体の視点から見た富の配分によるマーケットの
醸成といえるだろう。
企業の本音でいえば、将来の顧客創造が主たる目的になる。
リスクを覚悟の投資と長期戦であるがゆえに、
とても中小企業には手が出せないと考えてしまう。
しかし、それは自分たちだけでビジネスを創造しようと思うからであり、
現地の企業や経営者と組むと考えると、中小企業にとっても
チャンスがとても大きくなる。
ベトナムならベトナム、カンボジアならカンボジア、
アフリカのどこかの国でも同様だ。
その現地には、その現地の生活水準や環境にあった企業が必ず存在する。
また、貧困の中でもベンチャー起業家が彼らの経営環境で
ビッグチャンスを目を輝かせて狙っている。
先進国から見たらBOPビジネスであっても、彼らから見たら、
その国の規模と環境にマッチした有望なビジネスである。
視点を変えれば、中小企業が少ない投資で十分に貢献できる組み方が
いくらでもあるはずだ。
それこそ日本企業には人材育成の能力や経営ノウハウ、
先進技術など他国にない資源がある。
実際、JICAは貧困層対策を世界中で行ってきた。
支援の目的は、支援がなくなった後でも現地の人々が自立して
自走できることにある。
とはいえ、支援がなくなれば元に戻るケースが少なくない。
この大きな課題が十分に解決できないでいる。
従来、JICAの人的リソースは個人ベースの有志による協力隊の派遣であった。
しかし、昨今は企業との連携も進み始めている。
民間企業に所属しながらJICAの協力隊に参加できる制度である。
企業にとっては海外人材の育成の一端を担うこともできるし、
これを契機に進出国とのコネクションの形成に乗り出せるメリットもある。
当社も昨年から若手幹部の渡辺慎平がアフリカのウガンダに赴任している。
http://www.bwg.co.jp/bwgrecruit/introduction/swatanabe.html
中小企業の海外進出の多くは従来も今も製造業である。
現地で工業団地を建設し、そこにすそ野産業育成で
日本の中小企業を誘致しようとしている国は
東南アジアのあちこちにある。
これは、私から見ると「刈り取りビジネス」の一種である。
安い人件費を使い、競争力のある商品を使って先進国に売る。
雇用の創出にもなり、現地の外貨獲得の一翼を担うが、
将来的に相手国の産業の発展に寄与することはほとんどない。
また、直接的に生活環境が改善されるわけでもない。
そもそもの目的が生産におけるコストダウンだからだ。
欧米でも日系でもアジア各国の工場作業員の生活はまだまだ貧しい。
しかし、このビジネスの仕組みの上ではなかなか豊かになれないだろう。
ようやく、日本においても“現地で生産して現地で販売する”
という形態が増えてきた。
日本が、長期スパンでアジアやアフリカで存在感を発揮して、
未来の友好関係を構築するためにも「種まき型のビジネス」、
つまり現地の経営者にノウハウや技術を人材育成と併せて提供することに
力を入れるべきだろう。
そして、お互いに協業しながら新商品や新サービスを生み出していく。
これを産官学が連携して進めていくことが理想的だ。
だから、BOPビジネスにも中小企業の出番がある。
小さいパワーでも、大きなスケールで貢献でき、
ビジネスを生み出すことが可能だと思っている。
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