• 中小企業

第10回 「現状を打破する小さなイノベーション」

2016年がスタートしました。年明けから日本経済は株式市場の下落という冷や水を
浴びせられましたが、世界経済を鳥瞰すれば、新興国の消費マーケットは拡大の一途を
辿ると思われます。特に東南アジアは消費マーケットのみならず、TPP合意による
海外企業の進出も加速すると予測されています。
一方で日本国内を見ると、「人口減」と「高齢化」という2つの事象が同時に進行する
時代に突入します。先日、ある方から「日本にはすでに約6万人の100歳以上の方がいる」
という話を聞いて驚きました。そして、2020年にはその人口が10万人以上になるという
予測も出ています。もちろん、2050年にはその人口も大きく膨れ上がるはずです。
もはや、40~50年前の日本と比較すると、人口構造が大きく変化しているのは明らかです。
その変化を捉えることができなければ、この先の企業経営も立ち行かないのは当然でしょう。

ところが、日本企業、特に大企業の多くが、なかなかその「変化」に気づけません。いや、
頭では理解していると思います。しかし、実際に思考や行動を変えるまでには至りません。
私たちは90年代後半から東南アジアでのビジネスを展開しています。そのためか、幸いにも
日本の尺度で現地の事象を眺めることはありません。初期の頃はもちろん経験しましたが、
早い段階でそのような視点を捨て去りました。とはいえ、多くの日本企業は“今の日本”を
基準にして、物事を計ります。そのため、「あれが足りない」「まだ難しい」「インフラが
整備されていない」といった理由を並べて新興国などへの進出を断念するケースが多いのです。
これは、本当にもったいないことです。

昨年から、イノベーションについて多くの文献に目を通してきました。「日本の抱える閉塞感の
根底にはイノベーションが生まれにくい」と多くの経済学者が論じています。果たしてその通り
なのだろうか? ひねくれ者の私は多くの書物を読みながら、ひとつのキーワードが日本企業の
これからの道標になるのではないか、と実感します。それが『ジュガードイノベーション』です。
ご存知の方も多いと思いますが、「ジュガード」とはヒンディー語であり、インド人特有の物事の
捉え方ともいえます。悪環境や資源がない中でいかに“何とかするか”という意味と捉えています。
そして、その中で多くの失敗と成功を繰り返し、製品やサービスの開発に生かしていきます。

こうやって説明をしていても、実は特別に斬新な要素はありません。日本を代表するグローバル企業
であるトヨタやソニー、ホンダといった企業も、創業当初はすべからく「ジュガード」な発想で事業を
進めていたのです。次元が違いますが、私のように小資本で会社を立ち上げた経営者も、すべからく
「ジュガード」な発想で創業期の困難を乗り越えてきました。ところが、現代日本は豊かになり、便利に
なった反面、このような逆境に対する免疫力が著しく低下してしまったように見受けられます。中国、
韓国、台湾といった新興国ビジネスで台頭する各国は、ゲリラ的に多くのチャレンジをし、失敗も重ね、
そしてまた新たなチャレンジを繰り返します。一方、日本企業はどうしても失敗を恐れる傾向が強いのは
ご存知の通りです。

イノベーションというと、とかく「技術革新」や「新開発」といった大げさな意味で捉えられることが
多いでしょう。しかし、本来は新しい市場を開拓したり、ちょっとしたニーズやギャップを埋めて価値を
創造することです。大きな工場や研究施設も要らないし、数百人もの要員を抱える必要もありません。
必要なのは「やってみる」という人間の意志のみです。そのように考えると、新興国や後進国における
ビジネスは、小回りのきく中小企業にこそ大きなチャンスがあるのだと思います。
つまり、小さなイノベーションの連続が大きな果実を生み出すと確信しています。

最後に私たちの取り組みを紹介させていただきます。冒頭で述べた、日本の構造的変化を見据えた
動きとしては、シニアの方々と多くのビジネスを生み出していく予定であり、事業モデルの構築を
進めています。高齢化社会の主役こそシニアです。
そして、春には書籍として「社長の鉄則~新ビジネス創造&新市場開拓編」を発刊する予定です。

弊社も変化を察知し、適用する組織を目指し、今後も皆さまと多くの次世代を見据えた事業を
創りだしていきたいと考えています。
本年もご指導ご鞭撻の程、宜しくお願いします。