日本への期待値を再確認できた出来事があった。
講師の私は思わず嬉しくなった。
ビジネスチャンスが益々広がっていると実感したからに他ならないのだが。 当社はベトナムでも経営者セミナーを定期的に開催している。
ベトナム人経営者が今最も関心が強いテーマを選別しているのが特徴だ。
毎回の参加者は飲食、建築、IT、小売、ホテルなど多種多様な業種である。
今回は、私が講師として“日本に学ぶ経営のポイント”と題して行った。
サブテーマは『人材育成と顧客満足』についてである。
現在、ベトナムの経営者の多くは社員教育、マネージャー教育に
共通の悩みを抱えている。
この国は、これからようやくマネージャー育成の研修が
盛んになりかけている時期にある。
私はベトナムで10年以上の現地企業の運営経験を活かし、
そして、日本の今の会社や若者と対比させながら、話をするように心がけている。
今回は、“顧客満足”についてもフォーカスしたため、
ホテルやリラクゼーション系のサービス業や飲食業の参加者が多かった。
日本のサービス提供レベルがどうして高いのか?
その実現にはどんな秘訣があるのか?
リピータを増やすポイントは何か?
彼らは、少しでも真似をしようと目を輝かせる。
質問もこのテーマだと自然と多くなる。
この時は、ある眼医者の院長の質問が強く印象に残った。
要約するとこういうことだ。
顧客を増やすために「日本人の顧客をまず増やしたい」という。
そうすれば、“サービスにうるさい日本人”の顧客を満足させる
サービスを提供する眼医者として信用が高まる。
そして、ベトナム人や他の国の顧客も増やすことができる。
なるほど。
「やるな」と率直に感じた。
もちろん、以前から、アジアで活動している私たちは、
これに似た話はよく聞く。
ただ、それは、ホテルや飲食業といったサービス業の世界における話ばかりだ。
眼医者もこういうことを考えているのか、と実に新鮮だった。
日本のような恵まれた環境と比べると、ハングリーさが窺える。
中小企業の熟練された技術やノウハウ、巧みの技などは日本が最も誇れるものである。
ものづくり大国・日本
日本を評する時の決まり文句でもある。
これからも、日本が世界に伝承していくべき大きなテーマだ。
私は、それに負けず劣らず、日本が世界に誇れるものがもうひとつあると思っている。
それは、サービス提供のノウハウ、顧客満足の向上ノウハウである。
特にアジアでは、これからますます、関心が高まっていくのは間違いない。
世界一わかがままといわれる顧客に対応して洗練されてきた
日本のサービス。
顧客が減少する中で、いかに自社顧客を守るか?
あるいは、奪いとるか?
熾烈な戦いの中、研ぎ澄まされたノウハウや仕組みが存在する。
もちろん、既に過剰サービス、不要な顧客対応といわれる部分も
たくさん生じてはいる。
これからの日本は、古き良き時代を省みて反省も必要だろう。
しかし、これからのアジアには、必要なエッセンスはいくらでも抽出できる。
ベトナム・ホーチミン市にあるタンソンニャット国際空港に
降り立つたびに、思うことがある。
入国審査の検査官の態度だ。
私語は多いし、やたらと仕事がのろい。
およそ、サービス精神の欠片もない。
「本当に外国人が入国するのを歓迎する気があるのか?」と疑ってしまう。
市中に出れば、ホテル、レストラン、タクシー、ゴルフ場など・・・
日本人の私が感じるだけでなく、
ベトナム人もこのベトナムのサービスレベルには辟易している。
改善するには、お手本が必要だろう。
サービスとは何か?顧客満足を向上させる秘訣は何か?
押しつけはよくないが、今や日本から本気で学びたいというニーズが
どんどん高まっている。
サービス力の輸出
これこそ、日本が自信を持って、アジアの人に伝えていける財産だと思う。
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