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優秀なIT担当者はクビにしなさい!

今回のブログ、刺激的なタイトルに感じる方も多いと思う。

実は2007年に弊社が上梓した書籍のタイトルである。

 

優秀なIT担当者はクビにしなさい!

 

昔はIT、今はICT。それに加えてIoTにAIと・・・

まあICT業界の用語は次から次に生まれては消え、消えては名称を変えて蘇る。

なんともせわしない業界である。

そして、今やICTを知らない、もしくは語らない経営者はほぼいない。

経営の推進や新規事業創造、海外進出に至るまで、今時の経営者とのビジネスの会話は

何らかの形態でICT活用が登場する。また、夢のようなビジネス構想に話が弾む。

無理もないだろう。

メディアが伝えるICTビジネスに関する未来像は前途洋々だ。

政府もAI産業の発展を日本の武器にすると公表した。

経営に関する記事の半分以上がICTが絡んだものになっている。

従来のICTサービス会社やSIer(企業などのシステム構築を請け負う会社)

なども、にわかに元気になってきた。

千載一遇のチャンスとまではいわないが、数年に一度は繰り返されてきている

自らが仕掛けて生み出してきた大きなビジネスチャンスに遭遇しているのは間違いない。

冒頭の書籍のタイトルで言いたかったことはひとつ。

社長が思っているほど、自分の会社のIT担当者は優秀ではないということ。

いくら信頼でき、仕事ができる社員だからといって、任せっ放しにすると、

とんでもない無駄な投資や意味のないIT活用を繰り返す羽目になる。

ICTサービス会社の喧伝に振り回されている中小企業の経営者に警鐘を鳴らすのが

狙いであった。

 

こんなことができそう?

こんなビジネスモデルはどうか?

あの会社のネットビジネスは自社でも真似できそう?

 

当たり前だが、大抵の社長の関心はICTで儲けることである。

確かにICTで儲けられるように思う。

一昔前ではECの楽天を筆頭に「○○.com」の類の比較サイトの成功事例も増えてきた。

そこに加えて、IoTにAIにドローンまで登場する。

バラ色の将来を想像しても無理はない。

この20年間を振り返ってみても、こういうブームは何回か繰り返されている。

今までのブログでもすでに述べているが、ICT革命という産業構造全体の変化という意味では

今までとは異なる部分はある。しかし、企業経営、特に中小企業のICT活用に関していえば、

この約20年、特段変わったことはないのである。

いうまでもないが、中小企業は経営資源的には、大企業などと比べて大きなハンディがある。

新規事業創造や海外進出などに関しても、大きな投資ができる会社は皆無である。

かといって、じっとしていて嵐が過ぎるのを待っている時代ではない。

嵐は永遠に続くのでないかと錯覚してしまうほど、経営環境は激変し続けている。

見方を変えれば、ピンチはチャンスなり。創業者の嗅覚ではそう感じているだろう。

打つ手はないのか?

ここで今のICTをよく眺めてみる。

すると、経営に使える部分が多いと改めて実感する。

ICTは以前からそうだが、限りなくツールである。

しかし、今はビジネスを創造できる。

つまり、イノベーションを創造できるツールになりつつあるのである。

例えば、オンラインの仕組みを活用することであるが、従来の装置型のTV会議システムに

比べると少なく見積もっても、10分の1以下のコストで十分にビジネスができる時代に

なった。単純な使い方でいえば、遠隔地と接続するだけで出張費の節約になる。

しかし、もっと大事なことは、世の中のワークスタイルを変革する大きな武器のひとつに

なりえるのだ。

これこそ、中小企業のビジネスモデルに多大なる影響がある。

 

もうひとつ、今大流行のクラウドで説明する。

今や経営者でクラウドという言葉を知らない人がいたら、経理を知らない経営者と

同じぐらい疑われる。それほどクラウドは一般化した。

クラウドとは要するに基幹業務や情報管理業務に適用したオンラインサービスの総称であり、

ICTサービスを月額料金などでレンタルして使う仕組みのことである。

通信インフラが急速にハイレベルに進化してきたことが普及の最大の要因だ。

今まではソフトウェアパッケージを購入する必要があった。

あるいは、自社のニーズにあったものをカスタマイズして構築する。

つまりオーダーメイドだ。

現代はこのような機能やサービスを借りて使う時代である。

スーツの購入に例えていえば、オーダーメイドでもなく、既製品を購入するわけでもなく、

衣装をレンタルする。

中小企業は経営改革に取り組みたくても、なかなか大きな投資はできない。

一方、今や新規事業創造や海外進出にもICTは上手に使える時代になった。

やり方を工夫すれば、小さな投資で何回でもイノベーションを起こす機会は創ることができる。

最少投資で何回もチャレンジできる。

小さな資本で事業をスタートするリーンスタートアップと相性が抜群によい。

クラウドは事業創造のリーンスタートアップにピッタリなツールといえるだろう。

 

約10年前、すでにどこの中小企業にも何らかの形でIT担当者がいた。

専属の場合もあれば兼任もある。一見、専属の場合は安心できる。

しかし、これはこれで大きな落とし穴があった。

今のようにICTが複雑怪奇になると、少しばかりICTに詳しいことは、

経営判断からしたらマイナスにしかならない。

自社の専門家の範囲に経営判断の材料が偏るからだ。

例えば、先に書いたが、クラウド型のオンラインツールを導入する段になって、

昔と同じように製品のテストをしたがる。

事前の使用テストを入念に繰り返すのである。

そして結果、当該サービスを利用する1年間のコストよりも、

検証を担当するIT担当者の人件費の方が大きくなってしまう。

先ほどのスーツの事例で言えば、何日も何日もかけて、

担当者がどのレンタルスーツが良いか比較検討して、

そして、随分時間が経った頃に、社長に進言する。

「私の判断によると、このスーツがこういう理由で最適です」と。

大抵の場合は、すでに次の新商品が出てくるし、

そもそも、そのスーツの必要性はなくなっていたりする。

まさに、本末転倒。

担当者の人件費の無駄と機会損失を増長させるだけである。

 

もうひとつ加えると、現代の日本でオンラインツールの検証をするということは、

日本の通信インフラを検証するのと同じことでもある。

アフリカとの通信をテストするなら、まだ気持ちは理解できるが・・・。

リーンスタートアップの原則は、まず経営者が決断し、スタートしてみることが

最も大切なことだと私自身は考えている。

今の中小企業の弱みは、中途半端に専門的知識の入手や市場調査がネットなどでも

安易にできるようになったため、情報に振り回されてしまう点にある。

結局今でも、基幹業務改善のためのICTの導入も全く同じパターンで

相変わらず失敗している。

最大の原因は、中小企業が自社の仕事のやり方に固執しすぎるいう点に尽きる。

今や、自社の独特の仕事のやり方が武器になる時代ではない。

まして、経理、販売管理、生産管理、情報管理など、自社以外がIoTなどで

つながりだすと、自分の会社だけのICT活用のやり方などますます必要なくなる。

 

世の中にあるものをどう「つなぐ」かがこれからの最大のテーマだ。

AIが本気で社会に浸透してくると、中小企業のICT活用において、

特に経営に関する管理業務系については、ほぼ同じツールを利用する時代になるだろう。

そうなると、中小企業の差別化要素は、世界に唯一の特殊技術や徹底的に訓練された

人間力に立脚した特別なサービスということに帰結する。

ICTを中途半端に武器にできる時代は終焉を迎えつつある。

こんなことをつらつら書いていると、知り合いの社長に言われそうである。

 

「だったら、どうすればよいの?」

 

答えは限られている。

社長がICTの判別能力を身に着けて、経営判断のレベルでどのICTを使うか決定する。

専門的なことはプロに聞いて、経営判断の材料のひとつとして当たり前に考えることである。

もうひとつは、自社に優秀なICT担当者が必要というのであれば、

しかるべき教育を受ける機会をつくるべきだ。

今や企業経営に当たり前に使う必要があるICTを単に信頼できて仕事ができるからと言って、

中途半端に社員に任せている時代ではない。

 

最後に、ベトナムの会社の現状に触れておきたいと思う。

日本の戦後と比較すると30年は遅れている。つまりベトナムは戦争終結から40年の国だ。

民間企業が制度化され、本格的に生まれ始めて約20年ぐらい。

いよいよ全産業が急成長のスタートラインに差し掛かったところだ。

どの経営者にもICT活用は視野に入っている。

先進国の様子に常に敏感なのだら当たり前のことである。

 

社内では、経理要員はいる。

だが、経営組織はベトナムの大企業といえども脆弱だ。

基幹業務のICT活用すらままならない。

だが、社長は企業経営にはICT活用は必須だと理解している。

その後の行動はシンプルだ。専門家に依頼するのである。

こんなスピード感のある新興国の企業に比べ、日本の経営者のICT活用に関する

経営判断のなんと鈍いことか。

間違いなく、社長の頭の中に苦手意識が支配しているのと、それに加えてもうひとつの誤解を

いまだ拭いきれていない。自社の優秀な社員で十分こなせると思っている。

 

これから、日本が世界に伍して輝きを再び取り戻すためにも、中小企業が檜舞台に

躍り出なければならない。

その中小企業がICTを活用することは自らにとって大変有益なことである。

あくまでも社長が決断することであり、「優秀なIT担当者」ではない。

そのことを理解しておくことが、とても重要なのだ。

 

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