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【第8章】変化適応型組織への変革とICT活用


2012年1月、長年、写真フィルム産業のリーディングカンパニーに
君臨していたコダックが破綻した。一方で、同じく写真フィルム産業で
コダックとしのぎを削っていた富士フィルムは業績好調だ。
この両社の明暗はどこにあるのだろうか?
写真フィルム事業だけを頼みの綱としたコダックに対し、富士フィルムは
写真がデジタルの時代へと移行するのにあわせ、多様な事業分野に
チャレンジを続けてきて、新たな成長分野を見つけ出した。
変化への適応こそ市場の勝者になりえる典型であろう。
栄華を誇った日本経済が、現在の姿に変容するさまを
誰が想像できただろうか。おそらく誰も予想はできなかった。
しかし、その兆候となる変化はあったはずだ。
この変化を察知し、適応した企業が最終的に勝ち残った。
変化適応こそ、これからの時代に生き残るための重要な条件となるだろう。


当社は、厳しい経営環境を企業が生き残るためには変化適応型組織に
変革する必要がある提唱している。図8-4に示すように、
変化に適応するためにはまず変化を察知することが絶対条件となる。
本書でも述べてきたが、膨大化する情報の中から、チャンスとリスクを
察知する敏感な組織である必要がある。
そして、継続的にたゆまなく変化に適応する組織に体質転換する必要もある。
ICTを上手に使って、情報収集・活用力の向上と経営体質の改善を
実現することが重要だ。「変化に適応する」と言葉で書くと簡単なように
聞こえるが、実はこれが大変難しい。
例えば、クラウドサービスの利用ひとつでも企業は変化に適応することが
難しいことを実感する。


経営環境は大きな変化に見舞われている。前述したように、
日本経済の世界経済におけるポジション自体に大きな変化が生じたからだ。
GDP世界第2位の座はいつしか中国へと移り、グローバル戦略を
否応がなく求められる時代となった。生産拠点の海外流出は90年代後半から
本格的に進んだが、今ではマーケットまで海外に求める時代。
ましてや、現在の円安の進行により、国内需要は海外からの
インバウンド観光客頼みという有様だ。振り返れば、
身近な環境も大きく変わりつつある。
前述したようなICTが企業経営の基盤を担うようになった。
さらに、顧客がシニア層へと移行し、さらに外国人が購買層の多くを
占めるようになった。都内の家電量販店は中国人を筆頭とした
アジア人の買い物客であふれかえっている。
30年前にこんな日本を予想できただろうか? 


決められたレールの上をただ電車を走らせていればよかったのが、
かつての日本経済である。なにをつくれば、どれくらい売れるかの
予測も容易だった。だから、誰もが戦略や計画を重視する。
ところが、その戦略や計画がいとも簡単に覆るのが現代である。
そんな時代に企業組織が立ち向かうには、変化に常に適応できる体質を
身につけるしかない。そのようなマインドの人材を集めることが
まず先決になろう。そして、そのような人材がデスクをフリーアドレス、
在宅ワーク、海外へ迅速に乗り込むなどを繰り返し、変化を前提とした
ワークスタイルが生まれる。旧態依然とした人間と職場環境では
想像もできない仕事の風景である。
中小企業こそ、この社内改革を推進していかなくては生き残ることは
到底できない時代を迎えている。


そんなスタイルで仕事をする際にこそ力を発揮するのがICTだ。
変化適応型組織といっても、仕事の基本は今も昔も変わらない。
しかし、ICTツールを活用することになり、時間と距離を問わずに
仕事ができる時代となった。
PC のみならず、スマートフォン、タブレットはいうに及ばず、
海外拠点を結ぶテレビ会議システムなどを当たり前のように駆使できる。
私たちも10年以上前からテレビ会議システム最大手の「ポリコム」を
導入している。(※2015年9月30日発刊時点)


同時に、ウェブ会議のクラウドサービスも常時使用できるようにしている。
この2つのテレビ会議システムの導入により、世界中のどこにいても
会議ができる体制を敷いているのだ。また、東京や大阪でセミナーを
開催する際は、この通信システムを利用し、各地の会場にリアルタイムに
映像を映し出し、セミナーに参加している臨場感を味わってもらう。
地方の方々が、セミナーのためにわざわざ東京や大阪に出張するのは
生産性が悪い。だから、こちらから映像を放映して、地方の会場で
参加してもらおうと考えた。もうひとつは、講師となる私たちも、
移動時間短縮やコスト削減を実現できる。まさに一石二鳥の運営なのだ。
変化に適応していくためには、組織における定常的な意識の改革が
必要である。そして、人間の行動が変わったとき、その活動を継続的に
支えるのがICTの経営基盤である。これからの時代、変化適応型組織に
ICTは欠かせなくなる。実践する私たちの実感でもある。

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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する
第8章 中小のアナログ力が際立つ時代の到来-変化適応型組織への変革とICT活用 より転載)