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【第7章】課題先進国日本が貢献できること


「課題先進国」という言葉をご存知だろうか?「課題解決先進国」とも呼ぶ。
当社はこの「課題(解決)先進国」という言葉をふたつの意味で定義している。
ひとつは、国際的に前例のない社会的課題を抱え、それを解決、克服していく
問題に直面している国のことを指す。
もうひとつは、過去のさまざまな国家的な課題を解決し、
克服してきた国のことを指している。
だから「課題解決先進国」である。
この双方において、日本は世界を見渡しても、まさに、
課題先進国のトップランナーである。


前者については、現代の日本が抱える課題はさまざまだ。
少子高齢化による人口減は単純な市場縮小だけにとどまらず、
地方の消滅危機をもたらす。さらに、労働人口減少にともなう
従来の社会保障制度の存続危機にも直面するだろう。
さらに、老人介護問題も横たわる。東日本大震災で勃発した原発問題も、
原子力大国であった日本の象徴ともいえる。
世界を見渡しても、これだけ深刻な課題を抱えている国はないだろう。


東南アジアビジネスを展開している当社としては、後者である、
日本が過去に克服してきた課題の数々に注目したい。
それが、公害問題や農薬問題である。若い世代にとって、
日本の農産物が農薬まみれだった時代などは想像できないだろう。
さらに、公害問題も同様だ。水俣病など日本各地で河川、
大気の汚染が社会問題となり、その被害者たちは国を相手に
訴訟を起こしてきた。日本という国はこれらの問題をひとつずつ
克服してきた国なのだ。もちろん、まだ残された問題もあるだろうが、
かつての日本と現代の日本は大きくその点が異なるのだ。


現在進行中の課題とすでに過去に克服してきた課題の数々。
アジアの各国においては、日本が過去に克服してきた課題の数々が、
現在進行中の課題として噴出している。公害にしても、アジア各国は
大気汚染が深刻な問題となっている。特にいつもお騒がせの中国では、
日本にいる私たちも心配になるほどひどい状況がメディアによって
伝えられる。河川の汚染も深刻だ。ベトナム、インドネシア、
タイといった国々においても、工場からの廃水がそのまま河川に
垂れ流しになっているケースが多い。国が規制を強化しても、
なかなか汚染の被害が小さくならない。
農産物の農薬問題もアジア中が抱える大きな問題のひとつといっても
過言ではない。農家が商売のため農薬を使用することは仕方がない。
しかし、その使用基準が明確ではない上、安全性に大きく
影響を与える農産物が流通している。それを食する人々の体内の影響は
一朝一夕ではわからない。将来に禍根を残すことになる。


このような課題がまさに現在進行中でアジア各国で浮き彫りになっている。
そして、同じアジアでこのような課題を解決できる技術とノウハウを
持っている国は、日本しかないだろう。
例えば、低農薬で作物を作るためには何が必要なのか?
それは、農家に栽培法を指導することが考えられる。
そして、同時に規定の農薬量を超えていないか管理するしくみが必要だ。
日本の技術とノウハウをICTと融合させれば、現代の新興国、
途上国へ向けたソリューションが完成するはずだ。


日本は資源の乏しい国である。
しかし、技術と経験という他国にはない、かけがえのない資源を
所有している。さらに、日本が他国より優位に立つのは「信用」である。
品質の良い製品、安心・安全な食品や玩具など、日本という国がつくる
モノは新興国や途上国で信用されているのである。
この信用をベースに日本企業はビジネスを展開していけばよい。


日本で培った技術や経験を他国へ展開し、貢献することが、
日本の未来を切り拓くことになると確信している。
だからこそ、日本人は胸をはって、海外でさまざまなビジネスを
展開してもらいたいと思う。

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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する
  第7章 水牛とスマートフォンを知る-課題先進国日本が貢献できること より転載)