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【第7章】シニアの活動を支えるICT


少子高齢化が進行し、いまや日本は高齢化社会であることは
いまさら言うまでもない。高齢化社会がもたらす問題として、
労働者の高齢化、労働者不足、社会保障制度への負担増大などが
あることは、すでに説明をしてきた。
確かに大きな社会問題であり、この現実に目を背けるわけにはいかない。
しかし、なにも悲観材料ばかりでもない。


それは、高齢化社会の中に存在する団塊世代を中心に、
自分なりの価値観をもつ元気な世代で、年齢に関係なく
仕事や趣味に意欲的で社会に対しても積極的に行動する
シニア(一般的には高齢者と表現することが多いが、当社では年長者、
上級者という意味合いを持つシニアという表現を用いる)、
いわゆるアクティブシニアの存在だ。
このアクティブシニアが、全シニアの8割を占めるという。


経営環境の大きな変化のひとつに顧客の変化があることはすでに述べた。
つまりは、このアクティブシニアが有望な顧客の中心になっていくのだ。
かつてのシニア世代をイメージしていてはいけない。
新しい変化にも柔軟に対応しつつ、自分の生きがい、やりがいを大切にしている。
社会貢献意欲が高く、いくつになっても働く意欲を失わず、若者と交流したり、
自身の経験や知恵を伝えようとする方も多い。


中には、シニアになって起業をする方もいる。『挑戦しよう! 定年・シニア起業
(2015年1月・カナリアコミュニケーションズ)を発刊した岩本弘氏は
信濃毎日新聞社や関連企業で定年まで勤めあげ、
その後起業したアクティブシニアのひとりだ。岩本氏はみずからのシニア起業の
経験を他のシニアに伝えるべく、「シニア起業塾」を運営している。


70歳を超える現在もバイタリティにあふれている。
実にイキイキとアクティブシニアとして活動されている。


新しいことへのチャレンジ精神旺盛なアクティブシニアの方にぜひ
実践していただきたいのがテレワークである。いまや老老介護の時代であり、
身近に介護者がいるかもしれない。また、地方に住んでいることで
活動に制約がある方もいるかもしれない。こういったアクティブシニアの方は
テレワークを利用すれば間違いなく活動の幅が広がる。
先に説明した、徳島県の小さな町で葉っぱビジネスをしているシニアの方も、
無論アクティブシニアである。葉っぱビジネスを実践している高齢者の方が
携帯やPCを使いこなしているように、アクティブシニアの方にとって
ICTを利用することは難しいことではないだろう。


高齢化問題は何も日本だけの問題ではない。欧米はじめアジアの国々にも
近い将来、到来する大きな問題だ。内閣府の「平成26年度高齢社会白書」
によれば、アジア諸国も今後急速に高齢化が進むと予想されている。
特に韓国においては、日本を上回るスピードで高齢化が進行している。
中国、シンガポール、タイにもすでにその傾向があらわれている。
特に中国の高齢者の数は桁ちがいである。興味深いのは2007年当時、
日本でも『老いてゆくアジア』(2007 年9月・中公新書)、
『超長期予測 老いるアジア』(2007 年10月・日本経済新聞社)という、
アジアの高齢化にフォーカスした書籍が発刊されている。
これからのアジアにおいて、まさしく課題先進国である日本が
この問題に対してどう向きあっていくのか、世界中から注目されている。


しかし、見方を変えれば日本同様、こういった国々でも
今後アクティブシニアが創出されるということである。
日本が高齢者問題に対してICTをうまく活用して解決していくことは、
昨今のICTの可能性を鑑みると必然のことと思われる。
すでに産官学のさまざまな実証も始まっているし、民間も大手企業中心に
新たなマーケット創造、社会貢献を軸に動き出している。
日本と隣接するアジアの国も日本のこれからにおおいに期待している。


高齢化社会の問題をICTで解決するべき大きなテーマはすでに
多くの研究、調査、構想などあるが、おおむね「医療・健康・介護」
「働く環境支援」「充実した社会生活」の3つだといわれている。


シニアには、もともとICTに関してはデジタルデバイドの問題もある。
今まで以上により簡単な操作ができ、使いやすい、親しみやすいICTの
開発が待たれる。そして、彼らが持つ一番の宝は、さまざまな知恵や経験である。
当社では、特に、彼らの持つ日本の財産である知恵の源泉を国内にも
アジアにも伝承するしくみづくりに貢献していく考えである。

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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する
  第7章 水牛とスマートフォンを知る-シニアの活動を支えるICT より転載)