18世紀後半から19世紀前半にかけてイギリスで産業革命が起こった。
技術革新により、手工業から機械工業にシフトし、
鉄道や汽船の実用化による交通革命がもたらされた。
世界中に広がった産業革命は人類歴史上の大転換のひとつだといわれる。
このことは、世界史の授業で習っただろう。
この30年間のICT環境の進化は、著名な専門家たちも予想しえないものである。
しかし、ICT環境におけるパラダイムはまだまだ大きな変化の中にある。
つまり、現在が変化の終焉期なのか、はたまた大激変の序章に過ぎないのか
わからない。米国防総省のコンピュータネットワークシステム
「ARPA NET」が商用利用されはじめて約20年の時間が経過した。
その期間だけ見ても、社会システム、企業経営、ライフスタイルなど
さまざまな分野において多大なる影響を与え、パラダイムが
塗り替えられてきた。ICT革命の最大の特徴は進化しながら
社会に浸透していく点にある。
かつての産業革命のように、昨日まで白であったものが、
いきなり黒に変わるようなドラスティックな変化は起きない。
しかし、100年単位で見れば、この変化は相当劇的なものとして
扱われるかもしれない。
私は10数年以上前から日本とベトナム、東南アジアを行き来している。
ベトナムを中心にビジネスをする中で、その他の東南アジアの国々にも
何度も訪れている。そして、地球規模でICTが急速に浸透していることを
実感してきた。すでに東南アジアのカンボジアのような開発途上国でも、
携帯電話、スマートフォンは普及し、インターネットが利用されている。
社会全体で考えると、飛行機、新幹線、自動車のあらゆる交通機関は
ICTにより制御されている。エネルギー環境においても、原子力、
火力、水力、その他自然エネルギーもすべてICTで制御されている。
行政機関は、電子政府、電子自治体の導入を推進してい
るし、医療機関を支えているのもICTだ。物流システムの中心である
トレーサビリティもICTで成り立っている。さらに、あらゆるものを
インターネットにつなぐ、IoTへと進化を遂げている。
いまやICTなくして、社会システムが成立しないのだ。
私自身、身をもって経験した阪神淡路大震災や東日本大震災でもそうだった。
大自然災害に対して、人類がいかに無力かを痛感した。だからこそ、
自然や事故を想定し、不測の事態が発生したときでも、事業が継続的に
行えるようBCP(事業継続計画)に取り組むことが大切だと感じる。
また、災害や事故などが発生した際に、ICTの中断、停止によって
社会システムや事業活動に与える影響は極めて大きい。
ICTの中断、停止が、社会システムや事業活動にどれだけ影響を
与えるかを調査し、早期復旧するための復旧計画や緊急時対応の
策定を行うことが重要になるだろう。
これからの時代は、ICT環境を中心軸に置いたBCPにも
取り組む必要があることはいうまでもない。
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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
『ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する』
第7章 水牛とスマートフォンを知る-社会システムの主役になるICT より転載)