私が社会人になってからすでに30年が経つ。
バブル経済がはじけ、少子高齢化、国内市場の縮小、
顧客の変化、ICTの劇的な変化など経営環境が連続的に激変している。
この激変する環境において安定的かつ革新的な企業経営を推進するには
タイムリーで、正確な経営計数、経営状態の把握が不可欠だ。
飛行機の運航で例えると、パイロットである経営者が、
コックピットで経営状況に関するあらゆる情報を収集し、
瞬時に状況を把握をする。
そして的確な判断をくだし、飛行機となる組織を目的地に
導くためのコックピット経営が重要になってくるのだ。
すでに、このためのICTツールもさまざま用意されている。
例えば、経営ダッシュボードと称して、
KPI(Key Performance Indicators :重要業績評価指標)などの
指標に注目し、経営状態を可視化するツールなどもある。
では、今まで経営者はコックピット経営に必要となる
あらゆる情報をどのように可視化してきたか。
それは業務改善をしてシステムを開発するか、
パッケージソフトを導入するしかなかったのである。
また、そのためには高額なサーバーを構築する必要もあった。
仮に環境を整備したとしても、一昔前までは経営者自身、
社長室のPCでその情報を確認するしかできなかった。
つまり、社長室がコックピットであり、PCが計器の役割を果たしていた。
経営者は常に忙しい。社長室にいつもいるわけではない。
外出先でもこのような情報を閲覧できれば
どれだけ判断のスピードが速まるか。
にもかかわらず、社長室のPC上でしか、刻一刻と変わる
経営状況を確認できないのでは大変効率が悪い。
このような課題は現在のクラウドサービスですべてクリアできる。
ましてや、スマートフォンでコックピット経営は実現可能だ。
財務情報、営業活動情報、顧客情報、クレーム情報、
競合他社情報などが、小さな端末からいつでもどこでも把握できる。
クラウドサービスを利用すれば、電子メールはもちろん、
SFAもワークフローもあらゆる情報を蓄積し、
それらデータを共有することもできる。
また、サービス品質や汎用的な業務プロセスに
対応できるよう設計されている。
導入にかかるコスト、ランニングコストも低廉であり、
導入までも短期間で済む。
そしてなによりも経営者が移動中や出張中に関わらず
スマートフォンひとつでコックピット経営を遂行できる。
唯一、PCよりも劣るとすればスマートフォンの
画面が小さいがゆえの視認性かもしれない。
しかし、それも小型タブレットに置き換えれば解決する。
変化の激しい今の時代、よりスピーディーな経営判断や
指示が必要であることはいうまでもない。
コックピット経営の在り方を考え直すのも良いだろう。
最後に、スマートフォンを落としたらどうするのか?
という疑問についてだ。
いくらスマートフォン端末自体にパスワードをかけていても、
解読されてしまう恐れはある。
クラウドサービスのパスワード管理も破られないとは言いきれない。
セキュリティ面での不安は拭い去れないという事実は残る。
また、四六時中デジタルデバイスを操作するのは疲れる。
できれば、移動中ぐらいは、デジタルデバイスの操作から
開放されたいものだと思ってはいる。
今後は、ストレスの溜まらないICT活用技術の登場を願いたいものだ。
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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
『ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する』
第3章 パソコンもオフィスも不要な時代-コックピット経営はスマホで充分 より転載)