最近、ビッグデータという新たな言葉がやたらと注目されはじめている。
ビッグデータとは何なのか。直訳すると文字どおり「巨大なデータ」である。
必要なデータ収集やデータ活用方法を設計した上で、膨大なデータを蓄積する。
そしてこのデータを解析し、住民や顧客に対する利便性や快適さなどの
社会生活向上に生かそうという概念である。
コンビニではポイントカードで利用データを蓄積しているし、
交通機関も「Suica(スイカ)」や「PiTaPa(ピタパ)」
などのICカードの利用データを収集している。
そこで思い出してほしいのが、一時期話題となった
DWH(データウェアハウス:データの倉庫)である。
ビッグデータとDWHは何が違うのか。
多くの企業経営者は、耳慣れない新しい言葉に惑わされる。
BtoCビジネスにおいては、ビッグデータは大手企業が中心になって
蓄積を進めている膨大な顧客情報だと考えればよい。
顧客の情報に関するさまざまなデータや情報を収集し、顧客にサービスを提供する。
そしてその原型は、江戸時代の大福帳にある。ご存知のように、大福帳に
顧客の氏名だけでなく「いつ、誰に、何をどれだけ売ったのか」という
情報まですべて記録していた。
そして、そろそろ御用聞きが必要かと思う時期に大福帳を開き、
確認したのだ。
ビッグデータもDWHも本質は、膨大な顧客に関する
情報を蓄積し、企業経営に生かすことを目的としたものであり、
その原型は大福帳にあると理解していただければよい。
そして、2015年10月には日本国内に住民票があるすべての人に
12桁のナンバーが付与される「マイナンバー制度」が施行される。
2016年1月から、社会保障、税、災害対策の行政手続きに
このマイナンバーが必要になる。またしても新しい言葉の登場である。
マイナンバー制度は世間でなかなか認知されなかったが、すでに
導入間近になり、さすがに言葉は定着してきたようだ。
しかし、このマイナンバー制度に対して、施行直前になった今でも
企業の立場からどう対処すればよいのか、よくわからず右往左往している。
だが、よく考えてほしい。氏名、生年月日、性別、住所の個人情報の
基本4項目にマイナンバーという個人の識別番号が付与されるだけなのだ。
わかりやすくいえば、住民基本台帳と同じと考えればよい。
拙著『だから中小企業のIT化は失敗する』で、ICT用語は「やまと言葉」で
理解するべきだと述べた。ビッグデータは大福帳、マイナンバーは
住民基本台帳の派生だと考えればどうだろう。
ずいぶん、わかりやすいであろう。
次から次に新しいICT用語が出てくる。もっともらしい説明がつけられた
ICT用語をバズワード(具体性のないキーワード)とも言う。
新しいバズワードが出ても惑わされず、やまと言葉で考えその言葉の
本質が何なのかを理解すればよいのだ。
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(近藤 昇『ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する』
第1章ICTに振りまわされ続ける経営者-ビッグデータもマイナンバーもよくわからない より転載)