指し示してほしいという相談を受けることがありますが、
これは、よくある誤認識に基づくものです。入退室管理システムがあるかどうかがすべてで、
あれば100点、なければ0点という考え方です。
入退室管理システムがはいっていても、
外部侵入を許すケースは多々ありますし、
狭いフロアで顔見知りしかいないスペースだと、
そんなシステムがなくても、
外部侵入すればすぐに不審者通報されてしまいます。
何かセキュリティ投資を一度すれば、一定のレベルをクリアし、
それでOK、もう何もしなくてよい、
こういう考え方をしたがる人が多いです。
そのほうが楽だからでしょう。
しかし、現実はより複雑で、社会環境も変化すれば、
技術も進化します。
かつて私物ノートPC持ち込み禁止のルールを
掲げていた会社は多いですが、
誰もルール違反だと思わないまま、
スマホを社内に持ち込んでいて、
ルールのほうを変更したというのが実情です。
情報セキュリティ対策とは、一度きりやって、
ハードルをクリアして終わりではなく、
ずっとやり続けることです。
一方で、ある一時期に集中的にお金も労力もかけて
やらなければならないということもありません。
逆説的ではありますが、継続してやり続ける類のものである以上、
地道に少しずつでよいわけです。
よって、今回のお題のセキュリティ予算を考える際は、
リスクを低減させるためにいくらかかるかを考えて、
巨額投資にうんざりしたり、
なにもやらないと無視を決め込むよりも、
毎年一定額を予算として計上して、
その中でできるかぎり効果的なことをやっていくのが適切です。
つまり、毎年ン万円の定額をセキュリティに使うと
決めるということです。
では、いくらがよいのでしょうか。
セキュリティ対策にふんだんに費用をかけた結果、
会社が倒産していては本末転倒ですし、
大企業と同等レベルのセキュリティ対策を
中小企業ができるわけでもありません。
規模、業種によって、あるいは、保有する情報の種類によって
求められるセキュリティレベルは
違うとはいえ、予算額の決め方は絶対額ではなく、
売上の何%と決めるのがよいでしょう。
IT予算は売上の1%程度と言われます。
セキュリティ予算は売上の0.1~0.3%くらいが
適当なのではないでしょうか。
売上10億円の会社で、100~300万円。
売上100億円の会社で、1000~3000万円。
売上1000億円の会社で、1~3億円。
IT活用度によっても上下しますし、
業種によっても違いますので一概に言えることではないですし、
IT予算とかぶる部分もあるでしょうし、
物理的な対策など、必ずしもITと関係のない予算もあります。
それらのことを鑑みても、おおよそ、売上の0.1~0.3%は
いい線をついている数字と思います。
売上とはお客様からいただくお金でもありますので、
お客様に売上のどのくらいならセキュリティのコストを
負担してもらってよいかという指標でもあります。
お客様が商品やサービスに期待する品質や価値のなかに
占める割合でもあり、
それが、10%にもなることはないでしょう。
ある意味、経営に占めるセキュリティの割合は
その程度なのだということです。
ただ、今まで積み上げてきたものがなかった、
今までは0に近かったので、
挽回するために多くの費用がかかっていると感じたりするのです。
セキュリティ予算の売上割合はあくまで目安ですが、
一番重要なポイントは、毎年予算に組み入れて、
継続的にセキュリティ投資をしつづけることです。
新たな脅威が発生し、脆弱性は変化するので、
セキュリティ対策に終わりなしです。
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