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受験勉強の弊害、記憶で仕事する。

只今、受験戦争真っ只中。
寒いこの冬のなか、受験に挑む若者には試練の時期であり、
多くの者にとっては人生初の大きな関門と言えるだろう。

もうひと踏ん張り。頑張れ。
これを乗り越えれば、春爛漫、満開の桜と共に心躍る入学式が待っている。
日本の場合は桜が、厳しい試練を乗り越えた後を、格別に新鮮で華やかな雰囲気にしてくれる。

日本は、韓国やシンガポール程ではないにしても、
世界の中でも受験戦争が厳しい国のひとつだろう。
かくいう私も、四半世紀以上も前に受験勉強を体験している。
その時の私の取り組み方は、決して人様に言えるようなものではないが、
周囲が重苦しい雰囲気に包まれていたのは今でも覚えている。
学校、教室、クラスメート、あるいは家族など、
何ともいえない緊張感と期待が入り混じった環境の中で、
ひたすら試験勉強に取り組んでいたクラスメート達の姿が思い出される。
振り返ってみても、あの頃の皆にとって人生初の大きな試練だったのだと思う。

私の考えでは、自らの体験も含めて、
大学の入学試験とは、ほぼ全てが記憶力勝負であり、
記憶力テストであったと言っても過言ではない。
あれから30年近く経ち、自分の子供が勉強する様子を見ていても、
周囲の大人たちから聞いても、高校や大学の先生と話しても
その考えは大きく変わっていない。
もっとも受験勉強に限らず、世の中にはビジネスの為の国家試験や
医者や弁護士になるにも試験があるが、基本はやはり記憶力テストである。
例えば私の経験上、建築士にしても設計の実技と学科テストが半々で、
学科テストは100%記憶力テストであった。

私はこれらの試験(テスト)を全て否定しているのではない。
一長一短はあるが、ひとつの関所としてのテストは必要だ。
テストという形態では、自ずと記憶力テストになるのもある程度は仕方がない。
他にスクリーニングする良い方法はないし。
ただ問題は、このテストの結果だけで、
その人の能力や将来の可能性を決めてしまうことだ。
能力の極一部を試すだけという意味での、記憶力テストは大いに結構。
入学試験にしても、資格試験にしても、
ひとつのハードルだと捉えれば、体験すること自体も十分プラスになる。
ひとつの目標に向かって取り組み、時として過酷な努力もする。
自分を追い込み、プレッシャーに耐え・・・。

こういう環境下で人は確実に成長できる。
結果、合格が望ましいが、仮にダメでも得られるものは沢山あるのだ。
つまり、こういう試練を体験しているかどうかは、若者の素養として重要な要素である。

一方で、長年働いていると、受験勉強の弊害というものをビジネスの現場で感じることが多い。
記憶力勝負の大学受験の結果、
ハイレベルと言われる大学の学生=記憶力が良い。
これは概ね誰しも認めるところだ。
しかし問題は、記憶力だけで勝負し
結果を出せる職業がビジネスにおいてどれだけあるかだ。
仕事するときに、記憶力は必要ないとは言わないが、
記憶する力以外に必要な仕事スキルは山ほどあり、かつ遥かに重要だ。
社会人になりたての頃は、学歴がある人ほど仕事をする際に記憶に頼る傾向がある。
ただ、若い人は経験と共に改善される可能性があるからまだ良い。
もっと厄介なのは、仕事年数の長いビジネスパーソンでダメな人だ。
あいも変わらず記憶で勝負しようとしている無謀な人は幾らでもいる。

医者、弁護士、プロゴルファー、野球選手など。
実は一流の人は共通して、【記録する】ことを前提で仕事をしている。
もちろん、世の中には記録に頼らずともできる職業も沢山あるし、
そもそもサラリーマンの仕事は、必ずしもその道のプロでなくても出来てしまう。

次は逆の視点で考えてみる。
記憶力テストが苦手、あるいは嫌いな結果、大学に行っていない。
レベルの高いと言われる大学を出ていなくても、仕事が出来る人は山のようにいる。
経営者クラスになると、むしろこちらのケースが多い。
出来る人になる為に勝負する要素が、記憶力以外で沢山あるから当然だ。

結局、記憶力が良い、高学歴だから仕事が出来る、というのは概ね当てはまらない。
【記録力】スキルを磨くほうが、よっぽどビジネスで成功する可能性が高くなる。
もちろんその他にも、コミュニケーション力、企画力、問題解決力・・・など、
社会人になると、日々の鍛錬の中、一から築き上げなくてはいけないスキルを
必要とされるのはいうまでも無い。

最近、茂木健一郎氏が、ツイッターでこういうことをつぶやかれていた。

「試験の成績が良いからと言って才能があるとは限らないと言われる。これは本当にそうであって、たとえば、私が卒業した東京大学は、みんな試験の成績は良かったのだろうけれども、才能があるやつがそんなにいたとは思えない。これはどういうことなのだろう?」

 

おもわず、リツイートした次第である。

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