シンガポールもその国のひとつだろう。
観光でこの国を訪れたことがある人は私の友人・知人でも結構多いが、ビジネスで考えるとごく少数というのが私の実感だ。
もちろん、シンガポールは金融分野で有名なだけに、この分野に限ると多くのビジネスパーソンが何らかで関わりがあるのも事実。
しかし、それ以外の業種で見てみると、
“結構有名だけど実態が知られていない国”
という印象がピッタリくるかと思う。
これは、日本人がベトナムやカンボジアに抱く『未知の国、発展が遅れた国』というイメージとは、また違っている。
世界でも有数だけれども実態はわからないという感覚だろう。
実は、私も去年までそんな1人であった。
しかし、当社のアジアビジネス戦略の中で、欠かすことができない拠点との認識は以前から持っており、今年の始めに初めて訪れた。
現地で活躍しているシンガポール人の弁護士、世界でも有名な銀行の幹部や、10年以上前から、こちらで起業して活躍している経営者など。
何人かの日本人経営者の紹介で訪問することができた。
わずか、2泊3日の滞在でお会いできたのは、10人ぐらいであったが、実に多くのことを知ることができた。
少し、シンガポールについて紹介すると、1965年に、“建国の父”リー・クアンユー氏が卓越した指導力で建国した国である。
歴史をひもとくと、マレーシアからある意味見放される形の中で、生き延びるために独立に漕ぎ着けた国である。
そもそも、極めて狭い国土に、少ない人口。
ハンディだらけのスタートだったようだ。
資源も乏しい中での建国は、相当な困難な道であっただろうと、シンガポールの昔と今を知る人に聞くと、実感として頭をよぎる。
一党独裁体制、通商都市国家を目指した経済活動など世界で見渡しても、極めて異色の国といえるだろう。
相当な制約の中での国の繁栄には、相当な知恵や戦略それに加えて強固な行動力が必要だったのだろうと思う。
住宅の整備、ハブ空港の存在、高水準での教育の仕組みなどの施策に始まり、他にも、生活環境面でも驚くことも多い。
原生林の自然を見事に活かしきり、緑囲まれた都市の実現、たばこのポイ捨てなどに対しての美観破壊に対する厳しい罰則は有名な話だが、統制が取れた美しい国としても知られている。
一言で言ってしまえば、独創性に溢れた国の運営の仕組みがすばらしいのだ。
これは経営の実践とも似ている。
国というより、巨大なプロジェクト運営とも思える。
シンガポールやベトナム、タイから見た東南アジア・・・。
それぞれ、立場や見方が変われば、周辺国との付合い方や狙いも当然違う。
その中でも特に、シンガポールは、隣国のインドネシアやマレーシアとの関係がこの国の将来を左右するのだろうと、今回の訪問で実感した。
それに、香港、上海とのつながりも同じ中華系ということもあり関係性は強固。
そして、日本びいきの部分も少なからずある。
何よりも、自国資源が少ない中での周辺国との関係作り。
これは、日本も大いに参考になるのではないか?
周囲との共存という意味においても。
このシンガポールも今は水不足が深刻だという。
世界的な水不足の中で、シンガポールが国の存亡にも関わるこの大きな問題をどうクリアしていくのか、この力のある国の“知恵”と“実行力”を見てみたい。
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