こう書くと、アジアの国々に少なからず存在する親日派の話だと思うだろうが、私の実感では必ずしもそうではない。
特別の親日派でなくても、日本人はアジアの人々から人間として信頼されていると実感する。
自然と、日本人であるというだけで、得することは多い。
もちろん、“日本大嫌い派”もいるだろうが、今回は日本人を好きな方々に焦点を当てて話を先に進めたいと思う。
ところで、観光で世界を巡っても日本人は世界中で一番評判が良い。
これは、国民性の部分も大きいだろうが、先進国の中でもサービスレベルの高い国で生活している日本人にとっては自然のこととも思える。
レベルの高いところで馴染んでいる分、振る舞いも良い方向に出るのだろうと思う。
個人個人のレベルで見ても、確かに人を騙したり、平気でウソをつくような極めて人の信頼を損ねるような人は少ない。
また、商品の品質、サービスレベルの高さなど、日本的な緻密で職人的な技や製品、おもてなしの心に基づいた奥ゆかしい接客対応など本当に世界に自慢できることだと私も思う。
ここでひとつ考えてみたい。
このような世界に誇れる日本は一体誰が築いてきたものなのか。
この自慢できる価値を誰が創ったのかということをである。
今、日本の中で過ごしていると、悲しいかな、世界に誇れるすばらしい部分が、日々失われていくことに気づく。
特に、今の若者世代を見ていると、一昔前の日本とは違う世界が存在すると思える。
だからといって、必ずしも若者が悪いというステレオタイプの話ではなく、さまざまな要因で、日本が徐々に乱れてきたことの結果だろう。
今、若者もアジアに関心を持ち始めている。
しかし、率直に今の若者だけがアジアに出ても、容易には人の信用は勝ちとれないだろう。
日本を作り上げてきた私たちの先輩の方々こそ、アジアで活躍するべき時代だと思う。
今、この年代の方々は、シニアとして呼ばれる事が多い。
これは、国語的には、様々な知恵や経験を持った年配の方々を尊敬の念を込めて使う言葉だと私は理解している。
ものづくり現場に視点を向ければ、それは匠の技を持ったベテラン職人ということになるだろう。
また、人付き合い、社会活動などの面でも、実に奥ゆかしい懐の深い方も多い。
教育者としても志を持った方もおられる。
今の日本の行く先を憂えて、何かひとつでも日本のためにと志を持ちつづけている方も多い。
しかしながら、今の日本社会の中では必ずしもその存在が輝いているとは言いがたい。
都会などに行けば、街の姿は若者の色に染まっている。
若者は我が物顔で闊歩しているが、シニアの方々が輝ける場所とは言いがたい。
これは社会の問題とも言えるが、今の日本の厳しい経済状況、世界の中でのこれからの役割、IT社会の急激な浸透などを重ね合わせると、尊敬し大切にするべき日本を創造してきた方々の役割は限られてしまっていると思う。
そこでひとつ。
皆さんに、声を大にして伝えたいのが、アジアには、シニアの方々こそが活躍できる場がいくらでも存在するということだ。
『匠の技を伝える。技術立国日本のノウハウを伝承する
サービスの心を教える。品質確保のノウハウを教える・・』
言い出したらきりがない。
若者だけでできることではない。
すでに、アジアでご活躍の先輩の方々もいらっしゃるが、これからもっともっと、アジアで今までの智恵、スキル、経験などを大いに活用していただきたいと思っている。
そんなことを思いながら、日々、さまざまな方との出会いを楽しんでいるが、今日は、年末に出会った大谷さんという素敵な女性を紹介したい。
大谷さんの年齢は正確にお聞きしたことはないがシニア世代の元気な方だ。
自称、48歳と笑われながら言われるが、確かにカンボジアでの写真はお若い。
実際、大谷さんと話していると、全く年齢を感じない。
失礼かもしれないが、どうしてこんなに好奇心が旺盛なんだろうと思ってしまう・・・。
実は、大谷さんとのきっかけは農業だ。
知人の社長に私のアジアでの農業ビジネスの構想を話したところ、「知り合いで元気な年配の女性がいるから会ってみる?」と紹介を受けたのが始まりだ。
今、大谷さんは、カンボジアで農業ビジネスの準備をしているところだ。
先日も、ベトナム帰りの飛行機の中でバッタリ会った。
大谷さんは、カンボジアからの帰りとのこと。
偶然とは不思議なもので、年末お会いしていなければ、ただの他人。
お互いを知ることもなく・・・。
そんな不思議な縁を感じながら、
私が今年力を入れる予定のアジア農業に関する活動にもお手伝いいただけたらと勝手に思っている。
大谷さんは、カンボジアの10年後、20年後がイメージできると話をしてくれた。
カンボジアは、後進国のひとつ。
私も、昨年の初頭にホーチミンから陸路でプノンペンに走ってみたが、永遠続きそうに思えるほどの大地が印象に残る。
ほとんどは農地だと思うが、見るからに肥沃そうな大地だ。
産業の乏しい中、カンボジア政府もこれが財産だと強く思っているようだ。
「中国や韓国だけではなく、日本が出て行かないと・・・」
大谷さんは、そう力説する。
好奇心が強く、アグレッシブな言動に自然と私も乗せられる。
私は、そんな強い使命感すら感じる大谷さんの今後の活躍を楽しみにしている1人である。
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