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ベトナムでの社員教育は砂漠に水をまくようなもの?

――企業は人なり
このことを経営理念や経営指針に反映している企業は多い。
企業の発展には人が重要であることは、今更いうまでもない。
そして、人材育成は経営課題の重要な項目のひとつである。
大切な社員を教育し、スキルアップを実現し、
会社の業績の向上に繋げるべく教育費用として先行投資を行う。
しかし、教育という分野は一朝一夕では結果が出にくい。
経営者としてもそれ相応の決断と覚悟が必要だ。
社員を継続的に教育して育て、会社の貴重な戦力として
機能させることはある意味農業に似ている。
土地を耕し、種を蒔き、時間をかけて根気よく水をやり、草むしりをする様に
相応の労力と手間が必要なのだ。

アジアの新興国では、企業力を向上するために、多くの経営者や企業経営の
サポーターが社員教育の重要性に気づき、少しずつ取り組みを始めている。
日本では、平均的な会社であれば中小企業でさえもなんらかの
社員教育をするのが当たり前。
そうしなければ、乗り越えられない厳しい経営環境だからだ。
一方でアジア新興国は、日本の高度成長期の黎明期に似通っている。
さまざまなリスク要因はあるが、基本的には、人口増大、消費力向上を背景に
経営環境は年々良くなっている。
極端に言えば、普通にやってさえいれば、顧客は増えていくと思われる。
例えば、ベトナムなどでは、好調に業績を伸ばしている社長は大まかに
2つのタイプに分けられる。
全く、社員教育に興味を示さず、時間とコストの無駄と考える社長。
もう一方は、先進国、とりわけ日本のような組織力が強い経営スタイルを
目指して、真剣に社員教育に取り組んでいる社長。
まだまだ、ベトナムでは後者は少数派である。
しかし、先進国と協業したり、あるいは競争したりする中で、
先進国並みとはいかないまでも、ビジネススキルやマネジメント力の強化は、
ベトナムのビジネス社会には不可欠であることは明白だ。
だからこそ、当社は、アジア、とりわけベトナムにおける社員教育ビジネスに
力を入れているのである。

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10年近く前のことだ。
大手企業のベトナム現地子会社の社長に、ベトナム企業の社員教育を
ビジネスの柱にすると本気で話したことがある。
そのとき、「それは、近藤さん、砂漠に水をまくようなものだよ」と言われたのを
今でも鮮明に覚えている。
彼は決して、ネガティブに言ったのではないと今でも思っている。
それだけ根気と労力が必要だ、という意味だと解釈している。
実際、ビジネスとしては利益が出るにはほど遠いし、
数年間さまざまな会社の社員教育を行ってきたが、骨が折れる。

しかし、一方では、手応えを感じているのも事実である。
ベトナムのビジネス社会に社員教育が当たり前に根付くには、
最低でもあと10年以上要するかもしれない。
それだけ、ビジネス社会全体のことまで、浸透させようと思うと、
ベトナム人の社会生活のやり方や習慣の領域まで立ち入らないといけない
だろう。

ベトナムでも一般的なマネージャークラスになると、5Sは大体知っている。
しかし、実践が伴っているかといえば、そうではなく、
学問として大学などで勉強しているパターンが多い。
トヨタのカイゼンもそれなりに認知されている。
品質の優れたトヨタの自動車は、ベトナムでも大人気で、
自然と、カイゼンは高品質に繋がると感覚では掴んでいる。
情報共有化やチームワークの話にしても頭ではわかっている。
要するに、全般的に頭でっかちなのだ。
特に、欧米系の理論に触れたことがある経営者ほど、
すぐにできると思っている。
上層部でこんな感じだから、一般社員レベルでは推して知るべし。
よく言われているが、中学生感覚の社員がやればできると
思っているから面倒なのだ。

社会全体のレベルが高くないので、
当然、自分たちの目線での独りよがりな判断になっている。
正しい理論を学んだところで、それを実践する場がないのである。
そんな彼らに何をどう教えていくか。
これが重要なのだ。
すべて書いてしまうと、営業機密になるのでさすがに全部書けないが、
秘訣をひとつだけ披露させていただく。
彼らの日常生活の実例に落とし込んで、
『なぜ? どうしたらどういう結果になるのか』
を考えさせることが重要なのだ。
私は、PDCAの大切さは、歯磨きの習慣で教えている。
品質の話は、よく切れるベトナムの蛍光灯の話で理解してもらう。
時には、中国と比較するときもある。

「日本人だからできるんでしょ」

こういう先入観をいかに取り去るかが大切なのである。

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