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ダラットには2つの知られざる顔があった

先週、数年ぶりにベトナムの中部高原にあるダラットを訪問した。
主な目的は農業ビジネスの視察だ。
日本の農業とアジアの農業を結びつけて
共存共栄のビジネスモデル構築を推進する一環である。
想像以上に実り多き視察だった。ダラットといえば、ベトナム人にとっては憧れの地。
1度は足を運びたい有名な観光地である。
新婚旅行、家族旅行、社員旅行の候補地として
必ず上位に登場する。
確かに私達日本人が訪れるとそれも納得。
日本の軽井沢を思わせるような爽やかな気候や風景に感動する。
ホーチミンのように年中暑い印象があるベトナムだが、
ダラットは標高約1500mの高地。
気候が年間を通して15℃~25℃。
また、ベトナムの中でもフランス植民地支配時代の名残りが
最も反映された街並みだ。
一見、ヨーロッパに来たかと思わせる建物や風景の数々。
町を行くバイクなども数が少なく、
物静かな独特な雰囲気を醸し出している。

今回は、ベトナム人、日本人のビジネスパートナーと
共に出向いたこともあり、ベトナム人目線で沢山のことを
知ることができた。
数年前は、単にダラットを見に来ただけで、
当時は別荘のリノベーションビジネスしか思いつかなかった。
今回は4日間の短期間ではあったが、とても濃密な滞在となった。

日本から見たら、まだまだベトナムという国ですら未知の世界だ。
まして、ダラットとなると誰も知らないといって良いだろう。
もちろん、現地に駐在していれば
社員旅行や観光に行く機会があるかも知れない。
話題のひとつにはなっているだろう。
しかし、誰がこのダラットで
日本と連携したビジネスが盛んな事を想像するだろうか。
今回、私が日本の皆さんに伝えたい、強く印象に残ったことが2つある。
この知られざる2つの顔こそがダラットから見ることができる、
ベトナムビジネスのヒントとも言えるのである。

その1つは、ハイレベルなポテンシャルを持つ観光地としての顔。
ベトナムもご多分に漏れず観光産業に力を入れている。
ダラットも当然、海外から沢山の観光客を集めたい。
しかし、現地の経営者が熱く語るのとは裏腹に、
ベトナムや東南アジアの候補地のどこを見ても、
呼びたいのは分かるけど・・・ここでは・・・という場所が多いのも事実。
ところが、このダラットにいると、
こんな素晴らしいところに観光客が呼べない訳がないと
思ってしまうのだ。

街の真ん中の湖がヨーロッパ風の景観と見事にマッチしている。
隣接してゴルフ場もあり、景観、コース設計も抜群。
時折吹き抜ける風は、日本の初秋の頃の爽やかな風を連想させる。
ところが・・・だ。
ゴルフ場は日曜日でもお客さんがいなのだ。
日曜日でも平日並みのプレイヤー。
お客さんが少ないがゆえに、コストをかけられない。
コースのメンテンナンスが不十分。
折角のきれいなコースが台無しだ。
日本の事業家とは限らないが、
このダラットと連携してゴルフビジネスを展開したら、
大化けする可能性が大だと思うのは私だけだろうか・・・。

もうひとつは、今回の視察の主な目的である
農業ビジネスのポテンシャルの高さだ。
人口の9割が農業に関わっている。
ここの農業ビジネスがすでに日本と密接に、
着実に発展していることに驚いた。
TPP問題で喧々諤々やっている私達日本人は何も知らない。
輸入規制も何もない。
沢山の農産物がすでに日本に輸出されている。
苺、菊の花、ほうれん草、サツマイモ、ジャガイモ等々・・・。
これだけ大量の農産物が日本に入っていたとは誰も知らなかった。

特に、ベトナム系の野菜加工工場の現場も見せてもらい、
驚きはピークに達した。
加工用のほうれん草を製品化するプロセスは、
生産管理、品質管理、衛生管理、どれをとってもハイレベル。
責任者は自信を満々に説明してくれた。
20年かけて日本人に指導してもらいながら、
ここまで到達したんですと。
緻密な手作業が必要とする野菜の選別作業には
豊富な労働力が武器になる。
日本の1/5ぐらいの価格で出荷しているという。

日本の農業をどう守るか・・・。
これも確かに大切だ。
しかし、すでにこれだけの量が生産され、輸出されている。
そして、海外の野菜が日本の市場に侵食しているのである。

こんな実態を目の当たりにすると、
自分達が見えていないアジアの現実に気づく。
日本がどんな形でアジアと連携しようとも、
まずは、今起こっていること、これから起こりそうなことを
いち早くキャッチアップしておく必要を痛感した。

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