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アジアビジネスは種まきビジネスであれ。

「アジアビジネスは農耕型で考える」。
これは私が常に提唱してきている考え方だ。なぜ、農耕型なのか?
農業は一朝一夕で結果ができるものではない。
最低でも1年のスパンで考え、種をまき、収穫を行う。
「1ヵ月後に利益がいくら出ますか?」というような
マネーゲームに染まりきったような方々には、
想像もつかないくらい根気と忍耐が求められる。
また、農業は場所を決めたら動くことはかなわない。
作物がとれないからといって、
定期的に場所を代えて農業を行うことなど非現実的だ。
だから、今年だけでなく来年以降も安定的に作物が収穫できるよう
土壌を豊かにする。

アジアビジネスはこの農業に非常に似ている。
いわば、「種まきビジネス」なのだ。
現地に進出しても、いきなり順風満帆とはいかない。
法律の問題、人材の問題、マーケティングの問題など、さまざまな壁にぶつかる。
というより、ぶつからない方がおかしい。

人材に例えて話をしよう。
アジアの現地では日系企業が求める人材が非常に少ない。
現地は、教育を一から行い、何年もかけて育て、ようやく一人前になる世界だ。
日本のように成熟した社会では『即戦力』という言葉で片付けてしまうことも、
アジアの現地では叶わない願いである。
この人材育成も「種まきビジネス」の典型例なのである。

しかし、アジア現地では、このプロセスを踏まず、
少しでも近道を求める日系企業も少なくない。
引き抜き合戦を繰り広げ、人材の奪い合いに奔走する。
金の力にモノを言わせ、人材を右へと左へと動かす。
本来の教育がなされないアジア人スタッフの将来はどうなるだろうか。

日本企業の強みは時間をかけて物事を育て上げる力にあると考えている。
日本の高度経済成長は、
時間をかけたモノづくりと人づくり無くして成しえなかったはずである。
だからこそ、今のアジア各国においても、
もう1度その基本に立ち返ってもらいたいと心から願っている。
欧米企業や中国、韓国企業は、
このような長期的なスパンをもってビジネスに取り組むケースは少ない。
だからといって、日本企業が彼らと同じ土俵で戦う必要があるだろうか?
これは日本企業同士が現地で今以上に連携する必要がある。
種もまかずに作物だけとれる畑はない。畑に種をまかなければ作物は育たない。
冷静になれば理解できる話だが、
いざビジネスに身を投じていると忘れがちになる。

『アジアビジネスは種まきビジネスである』という考え方を忘れないでもらいたい。
利益も、人も、そして現地における成功も、長い目で見る必要がある。
ローマは一日にして成らず。『アジアビジネスも一日にして成らず』である。

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