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東南アジアビジネスは“違い”より“共通点”

ASEAN経済共同体(AEC)が昨年末発足した。
域内総生産が約300兆円になる巨大な経済圏が
本格的に始動したことになる。
このことは昨年末、メディアが一斉に報じた。
段階的ではあるが近い将来の域内の関税撤廃に向けて
本格的に動き出す。
東南アジアは人口が約6億人で、アジアでは中国、インドに次ぐ
大きなアジアマーケットとしてすでに、
注目度は日増しに高まっている。
それに加えて域内の自由貿易が加速すると、
自ずと東南アジアの存在感は増す。
しかし、当然ながら日本だけが注目しているのではない。
このことは日本の立場では見落としがちな視点だ。
すでに世界中から注目されているビジネスの
激戦区と言っても過言ではない。
日本から見れば、2~3年前からベトナムやインドネシアが
ようやく未来のマーケットとして視野に入りつつあるが、
他の国々はすでに現地のマーケットに深く入り込んでいる。
特に韓国、台湾、中国などの存在感は群を抜いている。
親日国だと思って訪問すると
日本人は一様に少し落胆した気分にもなる。
日本は他国と比較にならないくらい進出が遅れている。
当然、欧米もすでに大きくビジネスを進めていることは
現地に行けばよくわかる。
東南アジアの人々からすれば、
米国やヨーロッパ各国は憧れの国でもある。
もちろん、東南アジアには親日国が多いが、
日本が本気を示さなければ、なんとなく
“良い国”で終わりそうな危機感を常に持っている。ASEANの中でも、日本と雰囲気、
空気感が似ているメコンエリアに話題を移す。
東南アジアの中でもミャンマー、タイ、ラオス、
カンボジア、そしてベトナムの5ヵ国は
メコンエリアと呼ばれている。
中国から流れ出る大河メコンに隣接した国々だ。
海外に不慣れな日本人は、
日本や日本人を基準にして相手の国を見ようとする。

・日本と比べたベトナム
・日本と比べたタイ
・日本と比べたミャンマー

こんな具合にだ。
そして、政治体制、歴史、宗教などと重ねて、
それぞれの国の違いを懸命に探す。
ここに落とし穴がある。
私は長年、アジアでビジネスをしてきて
異なる視点を持つようになった。
それは“違い”ではなく、“共通点”を探すことだ。

人間はそもそも共通点が多い。
特に、東南アジアのような隣接したエリアであると
共通点に着眼した方が、
現地のビジネスでの成功の可能性が高まる。
私は、共通点を考える視点として、
“気候”と“田舎度”をベースにして考える。
東南アジア全体は似通った気候であるが、
特にメコンエリアは似ている。
亜熱帯で、1年は雨季と乾季に分かれる。
生活様式や食べ物なども似通っている。

ベトナムを例にもう少し詳しく見てみよう。
ベトナムは縦長で、南北に長い国だ。
実は、日本と似ているところが随分ある。
それは、北と南の感覚である。
北の首都ハノイのあたりには四季がある。
一方、ホーチミンのある南部には四季は存在しない。
年中、30度前後の気候だ。
日本の北海道と沖縄ほどの違いはないにしても、
生活する人の気質に影響を
及ぼしていることは理解できるだろう。
年中温暖な沖縄の人々の気質はホーチミンによく似ていると感じる。
一方、冬のあるベトナム北部の人々は北海道的な気質を感じる。
やはり、人間、年中温暖で食べ物の心配がなくなると、
おおらかでのんびりする人が多くなるのだと思う。

もうひとつの共通点は“田舎度”である。
ベトナムでいうと、ホーチミンやハノイは大都会である。
一方、カントー、ダラット、ゲアン、フエなどは
それなりの人口を擁するが、日本でいえば地方都市にあたるだろう。
とはいえ、ホーチミンなどに比べたら田舎であることを実感する。
かつての日本のように田舎の人に比べて
都会の人はどうも“すれている”。
よくその国の経済レベルを比較するために、
一人当たりGDPという指標が使われる。
国単位で見れば、ベトナムは日本の30年前ぐらいの水準だ。
しかし、日本と違って貧富の差が激しい。
今でもそうだが、ホーチミンの一人当たりGDPと
カントーの一人当たりGDPでは大きな差がある。

まとめて東南アジアといっても、
とても広く多様性があるのは事実である。
しかし、共通点をしっかり見極めていけば、
現地ビジネスの判断がぶれることは少なくなる。
その際の重要なポイントとなるのが“気候”と“田舎度”だ。
当たり前のことだが、
このふたつが人々の気質や生活スタイルを形成する重要な要素だ。
特に、日本の地方活性化が大きな課題となる中、
「地方こそ東南アジアへ」という動きが活発になってきた。
ところが、日本の地方都市も、
現状ではシンガポール、バンコク、ホーチミン、ヤンゴンという
大都市を目指す。
前述した重要なポイントを勘案した結果ならば構わない。
しかし、日本の地方のアジア展開の動きを見ていると不安が先立つ。

日本の地方は東南アジアの地方とつながるのが
ベストだと思っている。
一番親和性もあるし、気持ちも通じるだろう。
その時の判断基準には“気候”と“田舎度”は外せない。

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