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BRAIN NAVI17号 近藤昇コラム「AI時代を迎える心構えとは?」

第17回 AI時代を迎える心構えとは?

休日の書店の棚を巡るのは私自身の楽しみのひとつです。
話題書のコーナーに並ぶ書籍はまさに“世相の鏡”とも言えるもので、さまざまな
キーワードが並んでいます。
そんな書店の棚で昨今、特に目立つキーワードが「AI」「IoT」でしょう。
それぞれの書籍は多角的な視点で現代、そして将来像を分析しています。
それはそれで興味深く、参考になるものばかりです。
しかし、どの書店にも言及できていない、極めて大切な視点があります。
それは、「だから私たちは何を準備し、どう生きていくべきなのか?」という視点です。

社会の仕組みが変貌し、人々のワークスタイルも劇的な変化が訪れるのが、いわば
AI時代です。今まで人間が懸命に作業していたことはAIに置き換えられていきます。
これは、人間の作業の無価値化を意味します。
膨大なデータからある傾向や特異性を瞬時に抜き出す作業はすべからくAIに移行すると
仮定すると、空港の出入国審査、自動車の運転、市場調査などは人間の手から離れていく
作業といえるでしょう。

一方、シニアの方々が持つ豊富な知恵や経験、ノウハウはAI時代においても、
その影響を受けないと思われる方も多いと思います。
勘や経験、目に見えない知恵はそのシニア当人から伝授されなければ承継できるものでは
ないと通常ならば考えます。
ところが、この知恵や経験がデータ化できればどうでしょうか?
人脈マップや過去の業務経験などを分析し、最適な企業やプロジェクトをマッチング
させることなど、容易いはず。
つまり、AI時代になると、人間そのものの価値の見方が変わるのかもしれません。

「一体、人間とはなんなのか?」

このことを問われる時代になるのでしょう。

「シンギュラリティ」という言葉をご存知でしょうか?
日本語では“技術的特異点”と称されており、人工知能の力が人間の能力を超えた
世界を指しています。この説明だけ聞くと、いわゆるハリウッドのSF映画の世界を
想起させます。SF映画は想像できない世界だからこそ、私たちの心を躍らせてくれました。
しかし、その世界が現実のものとなった瞬間、私たちの生活はどう変貌していくのでしょうか?
そして、社会的、経済的な影響はどこまで及ぶのでしょうか?
多くの学者、研究者がそのことに言及していますが、私たちが何を準備し、どう生きていくか
までは、教えてくれません。

では、AI時代を迎えようとする現代に生きる私たちは何を準備すべきなのでしょうか?
私自身は、その答えを「人間らしさ」に求めたいと考えています。
人間そのものの価値が問われるAI時代ですが、人間だからこそ成しえる力を改めて考えるべき
なのだろうと実感しています。
その答えは先日閉幕したリオ五輪の日本勢の活躍も教えてくれています。
史上最多の41個のメダルを獲得した日本選手の中でも、特に目立ったのは団体戦です。
男子陸上、男子体操、男子卓球、女子卓球、シンクロナイズドスイミングなど、今回の
五輪は団体戦の醍醐味を堪能できた開催といっても過言ではありません。
そんな選手の奮闘ぶりから感じるのは、やはり人間の強さ、チームの強さです。
AIがどんなに進化しようとも、やはり人間の情熱やチームの強固な意思には及ばないでしょう。
AIに土壇場で踏ん張る力を求めるのは滑稽です。
いや、AIとこの人間の持つ真の力を同じ土俵で語ることこそナンセンスなのかもしれません。

AI時代を迎えるにあたり私たちに心構えが必要であるとすれば、『人間らしさの再考』であると
思います。AIは人間が豊かな生活を送るためのツールであるはずです。
豊かなAI時代を享受するためにも、このテーマを改めて探求していきたいと考えています。
現在、近日中に発刊予定の書籍を制作中です。
タイトルは「もし、自分の会社の社長がAIだったら?」
本書にもAI時代に振り回されない生き方、考え方を散りばめております。
そちらもぜひ、ご期待頂ければと思います。