日本の会社の数をほぼ正確に知っている学生はどれほどいるでしょうか?
正確な数を知ることは、社会を知るための第一歩なのだが、現実は、多くの学生が知らない。
私は、大学での企業経営やベンチャー起業に関しての講義の際には、最初に、
“日本に会社が何社あるか知っていますか?”
と尋ねることにしている。
話をする相手の社会や会社に対しての理解度、現状認識を確認するためだ。
受講する学生は、概ね3回生や2回生だ。
やりかたはこういう風に。
自分の想定する数字に近いところで挙手をしてもらう。
“1万社だと思う人?”
“10万社?”
“100万社?”
と、尋ねてていくと、稀に、1万社で手を上げる人もいるが、ほとんどの人は、数十万の間で手を上げる。
中小企業以上という定義だけで、200万社を超える会社が日本に存在することを知っている学生は、10%いるか、いないかといった程度だろう。
ご両親や身近な人が中小企業の社長である学生などがこの類に含まれる。
私は、中小企業支援ビジネスを本業としており、学生と立場が違うとはいえ、この結果には正直驚く。
就職活動真っ只中で、会社選びに奔走する学生たちにも、同じ事を聞いても結果は大差ない。
社会を知る第一歩として、遅くとも、就活をはじめる時には、知っておいて欲しい事なのだが・・・。
今の大学生にとって、日本に会社の数がどれだけあるかなど、関心がないのだろう。
また、今の大学での勉強や生活では、こういう情報を教わる事もほとんどない。
考えてみれば、今やインターネット時代。
就職活動を始めるほとんどの学生は、自分が就職のターゲットとする会社の情報を、大手求人サイトなどを頼りに入手していく。
この段階で、既に限られた会社しか意識しないことになる。
某大手求人サイトでも、多くても1万社だろう。
大企業だけにターゲットを絞り込み、そこに就職することだけをひたすら目指す学生には、
日本の企業など100社程度しか意識の中には入ってこない。
このような現実は日本の将来を考えると、残念でならない。
社会のことを良く知り、社会の問題点を認識して、社会に出てほしいのだ。
会社の数を知ることは社会のことを知る第一歩だ。
何故そうなのか?
シンプルに説明する。
日本に会社が何社あるかを知るということは、数多くの中小企業が日本に存在することを知ることでもある。
200万社以上ある会社の99%は、中小企業であり、これだけ多くの小さな会社が存在しているからこそ、大企業も成立しているのだ。
産業の発展には、中小企業の存在は不可欠である。
大企業だけでは、ものづくりもできないし、サービスの提供すらままならない。
そして、製造業に代表される、世界に誇るのことのできる“ものづくり日本”の担い手でもあるのだ。
会社の数を知り、そして、大・中・小の会社の種類と役割や産業の構造を知れば、今までの日本、これからの日本が少しは見えてくるはずだ。
また、会社の数を知ることは、就職活動の幅も広げてくれる。
就職の際に、大企業ばかりを追っかけなくても、それに匹敵するかそれ以上のすばらしい中小企業は数多く存在する。
しかし、そういう情報は、自ら意識的に探さないと、入手困難な時代である。
まずは、そういう会社が存在するという事実を明確に意識することだ。
ここ数年、大企業の採用枠が大幅に広がり、ますます、学生は大企業志向が高まったようだ。
結果、中堅・中小企業の採用は、さらに厳しくなり、生産現場やサービスの現場で働きたい人が減っているのである。
この現実は、マクロな視点で見れば、日本の経済の活力を低下させている。
大企業ならば、安定という時代はとっくに終わっているにもかかわらず、
多くの学生は中小企業には目を向けない。
是非、多くの学生が中小企業の魅力、働く事の達成感、充実感に気づいて欲しいと切に願いたい。
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