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新人の時をいかに過ごすか?

今年も当社に新入社員が入社した。
初々しい面々を見ていると、こちらも様々な意味で刺激を受ける。
ひとつは自分自身のその当時を思い出す機会になる。
何歳になっても、新人のころの感覚は新鮮だ。
もうひとつは、新人と触れ合うことで、今の時代を感じることができる。
大変な難局に日本全体が直面している。
こういう時代の新入社員の考えや視点に触れる機会は大事にしたい。
私たちが見ている現実と彼らが見て感じているものはかなりギャップがある。
このギャップを知ることこそが、先行き不安な日本の未来を明るくするヒントになる。

 

私が社会に出て約30年近く経った今でも、
入社して半年ぐらいまでの何ともいえない微妙な緊張感の中における
体験は鮮明に覚えている。
そして、今でも仕事の重要な節目で時々思い出す。
何人かの先輩には、結構厳しくされたと思う。
その一方で毎日のように飲みに連れて行っていただいた。
まだ、世の中はバブルを謳歌していた時代でもある。
しかし、建設業界は冬の時代と言われていた。
しかも、私の入社した建設会社は大ピンチの時期にあった。
中東での大きなプロジェクトが失敗し、いきなり全社員報酬カットに遭遇。
私たち新人の僅かな夏の賞与も30%カットになったのである。
私は、「なんと理不尽なことや」と思っていた。
私たちが入社の前に発生したことで自分たちには関係ないのに・・・と。
不平不満をあちこちに愚痴っていた記憶がある。
今になってみたら、恥ずかしながら世間知らずの甘チャンの発言。
会社という役割、組織の仕組み、責任者の立場など考えたら当然のこと。

 

――前任者の間違いだから、前任者の失敗だから、私には関係ない。

 

こんな発想は通らない。

 

ちょうど、入社して1週間後の歓迎会で先輩に言われたことも、
いまだに脳裏に焼きついている。
今でも良いお付き合いをさせて頂いているが、当時は大変近寄りがたい先輩だった。
その方は新人への一言で、最低2つは強みを持つようにと話された。

 

「仕事だけでは駄目。仕事と仕事。仕事と趣味。どちらでもよいから、
ひとつの仕事だけできます、では駄目だ」

このことは、今も実践できていると思っている。

 

3歳上の先輩は、オフィスでも酒場でも四六時中言っていた。

 

「俺が3年でマスターしたことをお前は1年でマスターしろ。
そして1年目に情報処理の一種の資格は絶対にとれ。それで合格だ」

 

ITは私の望んだ職種でなかった上に、
先輩に相当なプレッシャーをかけられ毎日が憂鬱であった。
結局、そのおかげで2年目に資格も取ることができた。
今となっては本当に感謝している。
振り返ると、20代前半はのんびり過ごしていた。
それが故に、やさしい先輩、人の良い上司になびいていたと思う。
しかし、今になって振り返ると、
厳しかった上司や先輩のことだけを覚えているし、
今も良い付き合いをさせていただいている。
厳しい上司や先輩は10年先、20年先のことを
考えて手厳しくしてくれる。
一方、やさしい人たちは目の前のことだけで対応する。
今に対しては責任は持つが、先に対しては責任を持たない人が多い。
いわば、その場しのぎなのだ。

 

最近の若者の中にも、

 

“厳しい環境で自分を磨きたい”

 

こんなことを望む人も意外と多い。
まあ、それは歓迎なのだが。
相対的に甘く育っている分、厳しさも手加減しないといけないのが、
不完全燃焼の原因のひとつだ。
日本がアジアや世界で渡り合うためには、タフな若者が増えることが不可欠。
このあたりの変革にも、もっともっと力を入れたい。

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