経営者は言うまでもなく、国としても経済の刺激策としてのカンフル剤を探すのに四苦八苦の様子だ。 こういう不況期には必ずといってよいほど新規産業の育成や有望産業の発展に注目が集まる。
そのような中、日本に観光客を呼び込むことへの期待が膨らんでいる。
特に中国人や周辺国の富裕層をターゲットとしての観光産業は、今や日本の救世主となる可能性の最大の注目産業のひとつと騒がれている。
確かに、ここ1~2年、日本にいても大きな変化を感じる。
国際空港に行くと、中国人の数が激増しているし、土産物屋はあきらかにターゲットを中国人に絞り込んだ品揃えに見える。
日本の都市部でも、中国人があちこちで行列をなして観光する姿や高級百貨店で買い物をする姿を見かけるようになった。
驚くことにクレジットカードも既に所有していて数十万円の買い物をする人も多いと聞く。
日本の消費者が消費に消極的なのとは対照的な構図だ。
彼らの目的は、品質がよくブランド力もある日本の商品を買い漁るだけかと思っていたが、実はそれだけではないようだ。
8/8付けの日経新聞に「日本観光、期待は食事」との見出しがあった。
日本の旅行で特に満足した食事は、すし、ラーメン、刺身の順だとか。
昨年、日本を訪れた外国人旅行者に行った調査でわかったことであると。
また、彼らが日本に来る前に一番期待したことは、ショッピングに代わり食事が一番になったとある。
もちろん、国によって、好きなものに多少のばらつきがあるようだが、上位は大体似通っているようだ。
日本の飲食店が、外国人客で一杯になることは単純に嬉しいことだと思う。
商売繁盛、不況に苦しむ外食産業にとっては明るい変化だ。
それにも増して、日本食のファンが世界中に増えることは日本のビジネスの将来を考えてもメリットが大だ。
今、世界は猛烈な日本食ブームだという。
なかでも、寿司は急速に世界に広がりつつある。
寿司だけではなく、和食は見た目にも美しいし、基本的にヘルシーな食事が多い。
何よりも、日本人のきめ細かさ、繊細さが料理に生かされていること自体が自慢できる点であろう。
以前、長く上海で活躍されている料理人の方とお話する機会があった。
日本の有名な調理師専門学校の第1期生で、東京、ニューヨーク、ベトナムなど世界で日本食のレストランを運営されてきた方だ。
今は、上海で本格的な日本食レストランを広めるためにさまざまな貢献をされている。
この方曰く、
「日本食は食べ物としておいしいだけではなく、日本の文化そのものなんです。世界中に日本食が広まるのは嬉しいけど、文化も一緒に広まらないと」。
私たち日本人は、生まれたときから食べている日本食があまりにも当たり前すぎて、日本の文化を代表するもののひとつと言われてもすぐにはピンと来ない人も多いだろう。
しかし、アジアや世界に日本文化と共に日本食が広がっていくことは、非常に意味のあることである。 ただでさえ存在感の小さい日本人になりかわって、日本文化の伝道師になっていく事を願わずにはいられない。
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