中国にGDPは抜かれ、電気メーカーは韓国勢に圧倒され、
いまや日本は大ピンチ。
今後、数十年の予想でも明らかだが、
世界第2位の経済大国日本は、下り坂を転がり始めた。
特に『技術立国日本』として世界に君臨してきた一昔前が、
懐かしいことのように思えるほど、先行き不安が先行している。
そんな背景の中、国も挙げて日本の技術、
ノウハウや強みをアジアや世界に輸出しようとする取り組みが
本格化する兆しがある。
健康医療、建設、ICTシステム、環境対策など、
世界の中でもトップレベルの技術やノウハウ、システムを有している分野は
いくつかある。
とりわけ、さまざまな技術要素、ノウハウやしくみを
複合的に組み合わせる必要があるスマートシティのテーマは、
日本が得意とし、世界も期待するところが大きい。
オバマ大統領が提唱し、すでに世界で実証実験が数多く行われている。
この分野こそ日本の出番だと思える。
ところで、スマートシティの定義を改めて確認してみよう。
さまざまな定義、説明があるが、
一般的な解説を要約したのが以下である。
スマートシティとは、
電力の有効活用や再生可能エネルギーの活用といった
次世代エネルギー技術を基盤にした環境負荷の少ない次世代型都市のこと。
交通や上下水道、電力の有効活用、再生可能エネルギーの活用といった
社会インフラの整備・運用をICT(情報通信技術)技術を利用することにより、
効率的に管理できるようになる。
私なりに表現を変えて言うと、
今よりも、より快適に暮らせて、かつ環境にもやさしい。
つまり、人間が地球を守ることを意識して生活する都市のことであろう。
日本は、経済産業省がリードして、この日本のスマートシティのノウハウを
海外に輸出するべく取り組みを行っている。
とはいえ、日本でも実証実験が始まったばかりといえる。
先月も有力なスマートシティ計画のフィジビリティスタディのプロジェクトに、
経済産業省が補助金を割り当てたばかりだ。
当社でもベトナムで縁があるロンタン社グループを日本に招いて、
事業投資説明会、視察などの支援を行った。
ロンタン社は、ベトナムでは有力な複合的なディベロッパーであり、
都市開発に限らず、不動産開発、リゾート開発、
ゴルフ場経営などを手がけている。
ロンタン社は、自社が行う都市開発を
スマートシティをテーマに取り組む考えだ。
そのために今回の来日では、
事業家や投資家に対して自社の説明だけでなく、
日本の都市開発の現状の視察や研究も行った。
私もいくつかの視察に同行して実感したことがある。
確かにベトナムなどのアジアの今は、
日本の数十年前、場合によっては戦前の日本である。
都市開発や交通インフラの整備の観点から見ると、
自然と日本が貢献できる場面が頭に浮かぶ。
可能性は確かに“大”だ。
一方で、日本の都市開発のノウハウが本当に役に立つのか、
という疑念も生じる。
歴史を紐解けば、日本の都市開発は、
地球環境に対してかなり負荷をかけてきたし、
コストかけ、数多くの無駄を生み出した。
今一度、立ち止まってみて今までのやり方や考え方が
間違っていた部分に関しては、反省し、改善しないといけない。
確かに、表面上は世界の中でも稀なぐらい美しい快適な街が
いたるところにある。
しかし、その裏で地球の資源を犠牲にしたものは大きい。
本当に、日本が都市開発でアジアや世界に貢献するには、
この部分の根底の反省に立ち返って、不要なものはそぎ落とし、
できるだけシンプルに生活スタイルを見直す必要がある。
誰もが皆、一足飛びで今の日本のような生活を望んでいるわけではない。
そのような状況下の人たちにとっても快適なスマートシティなるものを
考案して提供しないと、世界中に日本の過ちを
繰り返させることになるのではと思う。
ロンタン社のトップが今回の訪日の際に以下のように述べた。
“日本の全てを取り入れる必要はないのです。
ベトナムにはベトナムの実情がありますので”
この言葉がいつまでも強く印象に残っている。
電化製品や車、スマートフォンの輸出のような訳にはいかないのである。
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