では、そもそもアジアの人びとにとって日本の魅力とは何だろうか。
アジアの人びとにとっての日本の魅力の第一は、やはりお金を稼ぐことだろう。
アジア新興国は急速に経済発展しているとはいえ、裕福な家庭は多くない。
中国やインドなどの大国では貧富の差が激しくなるばかりだ。
アジアの人びとにとっての働く第一の目的は、
お金を稼ぐこととイコールであると見ていいだろう。
例えば韓国。現在、円高・韓国ウォン安を背景に、
アルバイトでお金を稼ぐために日本に来る韓国人の若者が増えているという。
ある韓国人大学生は大学を休学し、ワーキングホリデービザを取得して来日。
新聞配達で1ヶ月22万円稼いでいるという。
日本大使館によると、「一昨年第4四半期(10~12月)に1年間の就労を認める
ワーキングホリデーのビザを申請した人は2600人と前期より約20%増えた。
今年はビザの発給制限数を昨年の2倍に増やすため、
四半期当たり1800人が日本へ向かいアルバイトをする見通しだ」としている。
ちなみに、外国人が日本で働くためには、就労ビザを取得する必要がある。
しかし、就労ビザが取得できる職種は限られていることに加え、
取得すること自体も難しいといわれる。結果として多くの外国人は、
研修制度や技能実習制度などを利用して日本にやってくる。
多くのアジアの人びとが、日本にやってきてお金を稼ぐことを期待しているのだ。
アジアの人びとにとっての日本のもうひとつの魅力は、
日本型経営を学ぶことである。
日本企業はビジネスの歴史を通して独自の企業文化を形成し、
事業を発展させるための経営ノウハウを蓄積してきた。
一方のアジア新興国はビジネスの歴史が浅く、
企業経営は発展途上の段階である。
そこで、アジアの優秀な若者が将来の起業などを視野に入れて来日し、
日本企業で働いて経営ノウハウを学び取ろうとしているのだ。
アジアの人びとが日本企業で学びたいと考えている具体的なノウハウは、
経営管理、組織マネジメント、プロジェクトマネジメント、
品質管理やビジネスマナーなどだろう。
日本企業の組織でもまれ、経営ノウハウを吸収した上で自国に凱旋帰国し、
念願の起業を果たす人も珍しくない。
現在、ベトナムのホーチミンに本社を置く「KOBE~(こうべから)」。
この会社の代表取締役社長を務めるグェン・バック・コア氏は、
かつて当社にITエンジニアの研修生として在籍した経験を持つ。
コア社長は「日本で組織運営ノウハウを学び、
ベトナムに帰国してから会社を興す」と夢を抱き、
研修生としてIT技術を学ぶことを決意したという。
彼の思いは見事実現。
1年間の研修の後にベトナムに帰国して同社を起業、
いまやベトナム随一の企業に成長させている。
アジアの人びとから見た日本の魅力。それはもちろんこの2点だけではない。
アメリカやオーストラリアには及ばないものの、
憧れの国として日本に来るアジアの若者も多い。
あるいはビジネスとは直接関係ないが、
旅行先としての日本の魅力も高まっている。
関西国際空港株式会社が2010年8月に発表した
7月の運営概況(速報値)によると、
「外国人旅客数が52%増の34万4690人で、
7月の旅客数としては1994年の開港以来最高を記録」と発表。
7月から中国人向けの個人観光ビザの発刊要件が大幅に緩和され、
中国人観光客が増加したことも影響したとみられている。
アジアの若者が日本に魅力を感じて来日している。
その多くは貪欲に仕事を求め、懸命に働いている。
人材採用に悩みを抱える中小企業。
アジアの優秀な若者に視野を広げ、共に働く時代が目の前に迫っているのだ。
明日は、その優秀なアジア人材をいかに活用していくかについてお伝えする。
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