従来からの研修生、留学生に加えて、最近は、観光、ビジネス視察の
ニーズが急増し、いよいよ本格化してきたようだ。
ベトナムで20年近くビジネス活動をしてきたが、
少し前までは、来日経験のあるベトナム人は少数派だった。
当社はベトナム人向けのセミナーをベトナムで頻繁に開催している。
イチ押しの大人気のテーマは『日本の経営を学ぶセミナーシリーズ』。
その受講者に「日本へ行ったことがありますか?」と尋ねると、
手を挙げる人は、いまでも1割にも満たない。
百聞は一見に如かずという。
日本のことをもっと好きになってもらうには、
日本をよく理解し、日本そのものを観光などで体験するベトナム人が
増えるのが一番望ましいと思っている。
それは必然的にビジネスの発展にもつながっていくと考えているからだ。
日本は、世界の中でも有数の“信用されている国”のひとつである。
日本が世界に送り出してきた品質やサービスに代表されるように、
日本人は海外の人たちの期待に応えてきた。
これからもそれは変わりないだろう。
加えて人柄も好まれる。
私たちが東南アジアビジネスの登竜門と位置づけているベトナムは、
親日になる可能性のある国として、大きな可能性を秘めていると確信している。
ベトナムと日本は、国土のサイズ、両国民のフィーリングなどマッチするところが多い。
「Love Love ベトナム」を本気で推奨している当社としては、
訪日するベトナム人が増えると本当に嬉しい限りだ。
ここ最近は、ビジネス視察で日本の中小企業の訪問を希望するベトナム人経営者が急増中だ。
世界に誇る製造業は言うまでもなく、建設や農業などの現場視察も人気が高い。
きっと、日本には学ぶべき何かがあると信じているからだろうし、
実際、「5S」や「カイゼン」など吸収できることは多いと思う。
ますます、日本への期待は高まる一方だ。
しかし、これは見方を変えれば、日本人にとっては
大変なプレッシャーとなりえるのだ。
2年ほど前に知人の社長と酒を酌み交わしながら、こんな興味深い話を聞いた。
彼は日本の中部地方に拠点を構え、仕出し弁当をつくり、工場に配送している。
配送先の工場には、多くのベトナム人が研修生として働いている。
ある日、弁当に虫が入ってしまったそうだ。
それをベトナム人が見つけて、大クレーム。
彼は首を傾げながら「どう思う?」と問う。
ベトナムでの現実を知っている私からしたら、
どうしてベトナム人がそんなに怒っているのか?と不思議に感じた。
自分たちの生活環境では日常茶飯事、
今の日本から比べたら不衛生極まりない環境で生活している人が大半だ。
知人の社長は、ベトナム人にクレーム対応としてお詫びしたうえで理由を聞いてみた。
そうすると、ベトナム人からの返答はこうだ。
「日本でこんなことがあってほしくない。
日本は私たちにとっては信用できる国だ。
弁当に虫が入るなど考えられない」
憧れの尊敬する国だから期待を裏切ってほしくないという理屈である。
実は、最近、私たちもこれと似た体験をしている。
ベトナム人の方々をビジネスツーリズムで日本へ案内すると結構
神経を使うのである。
中国人の話でよく聞く「行儀が悪い」という性質のものではない。
ベトナムでは随分とアバウトでそれでいてフレンドリーな人たちまでもが、
日本に来ると色々とクレームを言ってくる。
前出の弁当の中の虫の話に根本は似ていて、やはり、
日本に対しての期待の高さの裏返しだ。
自分たちができるできないにかかわらず、思ったことを口に出す。
言葉は悪いが、子供のようだ。
私のベトナム人の印象はこれに近い。
過度な期待が、幻想を生み出し、現実が見えなくなる。
日本ではマーケットがシュリンクする中、
マーケティングの狙いは顧客の奪い合いに流れていく。
どこもかしこも日本の企業は、日本の顧客の期待値を上回ることを
実現しようとして努力している。
そのやりすぎが、クレーマーを生み出し悪循環につながっている部分も多い。
だからこそ、ベトナムとの関係は別であってほしい。
せっかく、日本とベトナムがますます仲良くなりつつあるときだけに、
過度に期待をするベトナム人にももっと本音で色々なことを伝えたい。
例えば、サービスレベルを充実させるには、見えないところの労力とコストも
かかるということも。
ベトナム人に期待される日本人も、ストレスにならない範囲で、
適度のサービスレベルでお付き合いしていくやり方を見出したいと思う
今日この頃である。
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