弊社がベトナムで建設関連のビジネスを始めて10年が過ぎた。
10年以上前からベトナムの現地ゼネコンの
社長に多く面会させていただいていた。
私は、建築学科卒業で友人たちが有名な大手ゼネコンで働いている。
そんな経歴を伝えると、大抵の現地企業は普通に面会できた。
私は不動建設という会社で勤務経験があったが、
海外ではほとんど無名だった。
とはいえ、10年前くらいは面会しても嬉しい期待感はなかった。
そのときのベトナム企業が日本企業に望む声の大半は
不動産投資だったからだ。
その次は日系企業から工事を受注したいというもの。
まれに、日本の技術やノウハウを取り入れたいので、
業務提携したいという社長もいたが、
本音は目先で儲ける話ばかりであった。
根気よく品質改善に取り組む時代ではなかったのだ。
10年前からすでに、ベトナムでは韓国、中国、台湾などの
馴染みの国とシンガポール、マレーシアなどのアセアンにおける
先進国の大手ディベロッパーがせめぎあっていた時代だ。
日本のゼネコンも数社が活躍はしていたが、
ベトナムの建設業界で日系企業の存在感はとても低かった。
そんな中、日系企業でオフィスや店舗の内装関係ビジネスから
スタートする事業がいくつか始まった頃でもあった。
言うまでもなく、品質と納期厳守を求める日系企業にとっては
とても重宝される存在だった。
これからのベトナムにおいて住宅産業は可能性のある分野である。
生活水準が少しずつ豊かになると、
誰しも良い家に住みたいと考える。
ベトナムも富裕層だけでなく、
中間層にも手が届くマンションが売れ始めている。
所得水準も年々向上し、マンションを中心とした
マイホームブームになった日本の約40年前に近い様相だ。
最近では、ベトナムにも外観が立派な
新築高層マンションも増えてきた。
見た目では、日本のそれと遜色はない。
ところが、実際に住んでみると日本のそれとは雲泥の差がある。
いくら、日本よりも割安だとしても大きな落とし穴がある。
私もベトナムで何回かとんでもないトラブルに
巻き込まれた経験がある。
比較的新しいマンションだったが、
私の留守中にトイレのパイプから大量に水が噴き出し、
部屋中が水浸しとなった。
不幸なことに備え付けの木製家具が水浸しとなり、
水を吸い込み、使い物にならなくなった。
苦情をオーナーに言うと、
「留守にするあなたが悪い」と逆ギレされたことを今でも思い出す。
その3年後には、別のマンションでまた災難に見舞われた。
今度は、給湯器が突然壊れて、階下の部屋まで水漏れした。
この時も留守だったが、
「あなたが部屋にいたら、もっと発見がはやかったはずだ」と
またもや、オーナーに怒られた。
ベトナムは「売り様」の国であることはわかっていても、
さすがに住まいの管理がこんなレベルでは・・・と
この国の未来を憂えたものだ。
私の場合は、まだ借家だから良い。
こういうマンションを購入したベトナム人は
どう思っているのか・・・と心配になった。
とはいえ、こんな状況でも数年前は
あきらめの声が圧倒的に多かった。
ところが、こんなベトナムの住宅事情が
最近になって様相が変わってきた。
「売ってしまえばあとは知らない」という今までのやり方から、
アフターフォローが充実しているマンションの価値が
上がりだしたのである。
ベトナムには日本のような充実したマンション管理の
仕組みやサービスがない。
いままでは、顧客が泣き寝入りすることが多かった。
新築マンションでもわずか数年で外壁がボロボロになる。
エレベータは頻繁に故障する。
共同扉はオートロックのはずが、わずか数か月で故障し、
開けっ放しの状態になる。
ベトナム人経営者の中でもセンスの良い人たちは
とっくに気づいている。
買った後で信頼が継続するような家を売ることが
今後の商売の鍵を握ることを。
もうひとつ劇的な変化の予感がする。
それは、ICTの導入だ。
日本でもスマートホームが普及する兆しがある。
特にシニアの住まいにはメリットが大きい。
弊社も本格的にビジネスとして取り組む計画だ。
今、ドバイでこのブログを書いている。
オイルマネーのパワーはすごいと毎回実感するとともに、
まさに砂漠のオアシスさながらに先進的な街がつくりだされている。
世界から富裕層が集結しているだけにサービスレベルも総じて高い。
ベトナムにも世界から人が集まりだした。
顧客の求める要求が高まると、
自然とサービスの品質は向上する方向に進むだろう。
ベトナムに日本の知恵やノウハウを結集したスマートシティが
近い将来できると思うし、
私たちもその実現に少しでもかかわりたいと思う。
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