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進んだ国は弱く、遅れた国は強い!!

日本国内を中心にビジネスをしている人たちは規模の大小問わず、
日本の国の強みには意識が向く。
しかし、日本の国を新興国などと比べた際の日本自身の弱みにはどうも疎い。
一般的には日本のような進んだ国、つまり先進国では新興国などの遅れた国への
海外進出初心者の方々は自然と日本の強みと遅れた国の弱みを重ねて、
ビジネス機会を見つけようとし、利益を予測する。
単純に世界に誇る日本の高性能、高機能であったり、品質の良い商品などを
新興国などに販売するときはそのままの発想でも大きくズレることはない。
ところが、最近、急速に盛んになりつつある現地に乗り込んでのビジネスを

展開する際は、この一方的な思い込みが失敗の大きな原因になる。
そして将来、とても大きなチャンスを逃すことにもなる。
実際、思い込みを抱き、ズレたまま進出し、短期で断念というケースも増えている。
 
先日、ベトナムにおけるICT産業の発展の第一人者であるヒェン氏とこれからの

ベトナムのICT社会の在り方について意見交換した。

 

私が持参したものは、近著「もし、自分の会社の社長がAIだったら?」と、
私が考えたベトナム社会や産業、そして生活者のためのICT化の課題リストだ。
彼は十数年前からベトナムのソフトウェア産業振興の中心的役割を果たしてきた

人物であり、ICT推進のエキスパートでもある。
弊社が初めてベトナムに拠点を構えたのはホーチミンの12区にあるQTSCという
ソフトウェアパークである。
彼がこのソフトウェアパークも手掛けたというから本当に縁とは不思議なものだ。
ちなみに、弊社はICT企業としてベトナムに進出した日系企業第1号であった。
彼と私はそんな因果もお互いに意識しているからか、妙に考え方が合う。
それは、ICTの役割に対する認識と人間に対する興味・関心が強い点だ。
自然とICTだけでなく「人間らしさ」や「生き方」そしてスマートシティの話などの
話題で盛り上がった。
彼曰く「遅れた国の強みをこれから活かしたい。そして、アジアやアフリカなどの

世界に貢献したい」と。まったく同感だ。
私自身、海外が長いせいか、思考回路の半分以上は新興国や発展途上国視点で
物事を考えているので、この一言は私の脳裏に鋭く刺さった。
彼との面会の後、今週ベトナムから帰国してから「遅れた国の強み」という
キーワードを中心に色々と考えを巡らしたり、読んでいる最中の書籍や

アフリカのことを考えてみた。
現時点の結論は、やはりどう考えても遅れた国は強い。
 
今、地球は人口爆発の最中にある。
先進国の人々は遅れた国に実際に行ったことがなくてもテレビやネットを使い、
その気になれば、今は地球の隅々まである程度知ることができる。
少しでも遅れた国の実情に関心があれば、否が応にも目に飛び込むのは貧困や

幼い子供たちの死、そして終わることのない紛争などネガティブなキーワードだ。
日本に住み慣れた人の大半は絶対に行きたくない国というレッテルが刷り込まれる。
実際、私がアフリカに行ってきたというだけで「大丈夫か?」と心配される。
特に、豊かで便利な国でしか生活をしていない若い層は特別な感覚の人を除いては、
ほとんどが敬遠してしまう場所である。
仮にそんな場所に飛び込んでみたいという子がいても、親が反対するケースが多いだろう。
明らかに、貧困や紛争地帯は、遅れた国の弱点だし今後の課題である。
 
話は変わるが、貧困でいえば、
日本のような豊かな国でも、子供の貧困問題もあるし貧困女子という実態も存在する。
とはいえ、全体としてみれば、日本の貧困と遅れた国の貧困では深刻さが違うし、
同じ土俵で比べること自体、無理がある。
遅れた国の最大の問題は食糧不足であり、不衛生な環境下での生活にさらされている

ことである。

日本は、食料の3分の1を捨てている国である。

これは、アフリカの小さい貧困国の1年間の食料にも匹敵するものだ。
地球規模でみれば、食料生産の問題もあるが、適正配分のバランスが崩れた状態

なのである。衛生面も深刻だ。アフリカでは伝染病などで赤ちゃんの死亡も多い。
大きな問題ではあり、先進国などはNGOやBOPビジネスなどで対策を講じている。
そのため、少しは光明が見出せるような改善は進んでいるところだ。
しかし、こういう環境下で生活している人は根本的にタフである。
バイタリティがある。

 

   

 

 

一方、日本は衛生的過ぎて人そのものが弱っている。
一生、日本国内で生活するなど自分自身だけのことを考えれば、
問題にはならないかもしれないが、これからは、地球全体が加速度的に

つながる時代である。ICTでつながるという意味だけではない。
人が交流し、行き来する。
伝染病だっていつ飛んでくるかわからない。
遅れた国は今よりは衛生的に、日本のような進みすぎた国は、
今よりも不衛生でも生活できるように、それぞれがバランスをとりながら
シフトしていく時代を迎えていると思う。
 
話をICTなどの最先端技術に戻そう。
ICTの活用は短期間で見れば、進んだ国が強い。
だが、長期的に見れば、遅れた国が強い。
これが私の結論である。
理由を簡潔に述べると、ICTは何のために使われるかを考えればすぐわかる。
ICTはツールである。
人間が人間らしく豊かに生活するためのツールである。
これは、人間がホモサピエンスであった時代に道具を使いだして進化してきたことと
通じることであり、人間誕生の時から今までもこれからもツールとかかわって、
進化する特殊な動物だ。
今、先進国はIoTやAIと騒いでいるが、人類誕生の歴史から見たら、
これも単なるツールの進化のひとつに過ぎない。
とすれば、AIなどはツールだから、人間が使いこなし、人間が進化するために
使えばよいだけなのである。物事は単純に考えるとよい。
便利なツールや機能的なツール、特に科学技術が絡んだツールは、
遅れた国と進んだ国のどちらで役に立つかである。
このICT活用においても、日本はすでに便利すぎる国である。
ICT化で享受できるメリットがそう多くはない。
これからは、日本のような進んだ国では人間がこの便利すぎるツールに
追いつく必要に迫られる時期がしばらく続くだろう。
これが進んだ国のICT革命の本質である。
 
一方、遅れた国は、生活や社会を便利に機能的にするリーズナブルなツールを
徹底的に使いこなして、生活を便利に豊かにすることができる時期が到来したといえる。
短期間で進んだ国に追いつくことができる部分も多い。
これが遅れた国のICT革命の本論である。
現時点で、彼らが強いのは人間らしい生活を失っていない点にある。
生きる力にみなぎっている。

 

    

 

この点は決定的に日本とは違う。
こう考えると、遅れた国のICT活用の在り方やモデルが世界標準になるのは明白である。
このことは、人類の歴史を紐解けばわかる。
人間の生活にとって役に立つ道具は発明の場所や時期に限らず、いずれは世界中に

まんべんなく広がっている。
太古の昔のツールを見ればよく理解できるだろう。
そういう視点で見れば、世界中にまんべんなく劇的に短期間に広がるICTが
これからのツールとしての主役になるのは間違いない。
世界規模で見れば、進んだ国のICTビジネスは、これから加速度的に弱者になっていく。
 
もうひとつ、似たような観点でスマートシティがある。
日本でもさまざまな実証がなされてきた。
何をもって実現化し、成功といえるかは意見が分かれるだろうが、
日本では成功しているとは言い難い。
私は、そもそも日本のスマートシテイ化はもっと人間に焦点を当てないと

成功しないと思っている。
つまり、健康的でストレスがたまらない、それでいて環境重視の住環境というイメージだ。
ならば、遅れた国と比べて、日本の地方都市はすでに何もしなくても十分に
スマートシティである。
詳細はまた別の機会に書いてみたい。
 
ところで、実はベトナムでもスマートシティは大きなテーマとして持ち上がっている。
すでにホーチミン市がスマートシティ化に向けて動き出した。
弊社が活動しているベトナムの地方都市カントー
スマートシティ化を進めると先日、ベトナムの新聞で発表された。
この両都市と日本を比較してみよう。
カントー、富山、ホーチミン、東京…。
私が勝手に並べたスマート化しやすい都市の順だ。
遅れた国の地方都市が一番スマート化しやすい。
理由は簡単だ。
幸せに人々が暮らしているからである。
もちろん、豊かになりたい、便利になりたいという願望は強く感じる。
だから自然ともいえる。
ベトナムは日本のようなストレス社会ではない。
次に富山。
都市輸出」にも出てくるが、富山は日本でも住みやすい場所ナンバーワンである。
ホーチミンは巨大都市すぎる。
バイクや車による公害問題など問題も多く噴出している。

 

  

今の中心街を観光地として残し、郊外にニュータウンを作るのが現実的。
勝手に比べるなら、ミャンマーのヤンゴンの方がスマート化のハードルは低い。
理由は、バイクの走行を政策で禁止しているから。
最後に東京だ。
オリンピックで期待は大きい都市だが、
今の日本人で東京にずっと住み続けたい人がどれだけいるだろうか?
単純に考えても、コンクリートに囲まれて生活するのが体に良いとはいえない。
しかも、人込みで疲れるし、せわしない。
世界は確かに東京に注目するだろう。
もちろん、世界のお手本になりうる部分も多々あるが、反面教師になる面も数多い。
この両面において、2020年は大きな意味を持つことになるだろう。

 

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