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【第7章】ものづくりとICT


日本の高度成長期を支えてきた技術力。
今日においても、日本製品の品質の高さは世界的に認められるところである。
技術力を高め、高品質を維持するためのたゆまぬ努力を長年にわたり、
続けてきた結果だといえる。
しかし、少子高齢化による産業への影響は、「ものづくり現場」においても
例外ではない。就業者は高齢化し、ものづくりの仕事は厳しいと、
若年層の就業者が増えない。
労働者不足や長年蓄積した熟練の技能伝承ができないことが、
大きな課題である。この課題を解決するべく、期待されているのが、
人手不足解消のワーカーとして外国人労働者を能動的に活用すること。
そしてICTによる最先端技術で製造業全体の生産性を向上することである。


ICTの組込や制御技術により、多くの産業機械が作り出され、
多くの製造ラインで稼働している。また、すでに説明したとおり、
日本はロボット大国と呼ばれ、世界の産業用ロボット市場で圧倒的なシェアを
日本企業が誇る。その産業用ロボットが一番活躍しているのが、製造業である。


さらに登場したのが3Dプリンター。
いま、ものづくり現場ではこの3Dプリンターの活用がおおいに注目を浴びている。
3Dプリンターは、3次元のオブジェクトを造形する機器だ。
3DCAD、3DCGデータといった3次元データにもとづき、
断面形状を何層にも重ね、立体物を製造する。
熟練の技で材料を削ってものを作りあげるのではなく、積層して3次元の立体物を
製造するというこれまでとはまったく異なる発想だ。


PC画面でファイルを選んで印刷するかのように、
3次元データから立体物が製造されるのだ。
3Dプリンターさえ操作できれば、熟練の技術者でなくても、
誰もが毎回同一品質のものが製造できる。先に説明したように、
技能伝承が喫緊課題の製造業において大きく期待されている。


同じく、注目を集めているのが、IoT。インターネットを経由して
あらゆるモノがつながる。スマートホームでは、外出先からスマートフォン、
タブレットなどの端末操作で自宅の家電製品の電源を点けたり、消すことが可能だ。
IoTを活用した、高齢者の見守りサービスや遠隔医療サービスが進みつつある。


製造業においては、IoTを活用しモノ同士がつながり人を介在することなく、
自動に制御が行われるようにするM2M(Machine To Machine)
への期待が大きい。例えば、センサー技術との組み合わせで、センサーからの
さまざまな計測データをインターネット経由で連携し、計測データにもとづいた
自動処理を行う。人の介在を減らす。労働者不足への対応だけではなく、
製造業全体の生産効率を高めることにもつながると考えられる。


製造業が抱える課題を解決できる可能性を秘めたICT。
これからもものづくり現場で、ICTに関するさまざまな実証実験や
新しい技術が創出されることであろう。おおいに期待が持てる。

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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する
  第7章 水牛とスマートフォンを知る-ものづくりとICT より転載)