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【第4章】コスト削減はここまでできる


いつの時代も新しい商品やサービスが世に送り込まれる。
当初の商品やサービス価格は高い。
しかし、その商品やサービスが普及すると、同様の商品や
サービスを提供するライバルが出現し、お互いに研鑽しあう。
技術が進歩し、より高機能なものが付加され、
提供価格が下がってくるものだ。


ICTに関する製品、サービスも同様の歴史をたどってきた。
むしろ、この数十年のICTの急激な技術革新は類をみないものであり、
製品、サービスの普及で、市場価格が下がってきた典型的な業界といえる。
このことはBtoBのビジネスにおいてとても大切なことである。
なぜなら最新情報を知らないことにより、余計なコストがかかっている
可能性があるからだ。
つまり、知らないうちに利益を損なうことになるのである。


JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)の調査によれば、
1990年のPCの国内出荷における平均価格は284千円。
それに対し、2014年には79千円に下がっている。
実に3分の1以下に下がっているのだ。


PC以外に、回線にかかるコスト低下も顕著である。
専用線の価格は、特に遠距離の価格が高いことが指摘されていたが、
1995年から逐次料金改定が行われコストが下がってきた。
高速で大容量の情報の送受信が可能な通信網である
ブロードバンドにおいても、回線使用料の廉価化が進んだ。


その一方で、ITベンダーは安価な製品やサービスが世に出ても、
すぐには、顧客にその情報を伝えない。
顧客満足度から考えるとありえないことだが、事実そうなのだ。
携帯電話に加入した際のオプションサービスを思い出してほしい。
携帯電話を購入すると1ヶ月間だけは無料で使用できるという
オプションサービスを勧められる。
しかし、解約を忘れると2ヶ月目からは有料になる。
そのサービスが不要であれば「1ヶ月以内に必ず解約してください」と
店員から言われるが、つい忘れてしまう。
解約することを忘れ、有料になっている利用者も多いことだろう。
こんなことが公然とまかり通っている。
必要なら申し込むというのが、当たり前なのだが、
昨今のICT関連サービスは解約忘れを狙ったサービスが
あまりにも多すぎる。


実は当社にも苦い経験がある。
こういった回線サービスの料金改定により、従来よりも10分の1の価格で
回線利用が可能になった。しかし、当社のインフラ担当の情報収集不足
によりそのことを知らず、1年間従来の料金を払い続けたのである。
情報を知らないことの無駄、情報収集の重要性を痛感させられた出来事だ。


テレビ会議システムを導入すれば、物理的な距離間が縮まり、
時間短縮や業務効率が高められることはこれまでに説明してきた。
そのことにより、コスト削減も実現できる。テレビ会議と同機能を保有し、
インターネット上で行えるウェブ会議のクラウドサービスがある。
テレビ会議システムの導入には、一般的に初期導入費として
2拠点間の設置に約200万円〜350万円のコストがかかる。
その上、テレビ会議に必要な、「IP-VPN」(通信事業者の保有する
広域IP通信網を経由して構築される仮想私設通信網)や
「広域イーサネット」(地理的に離れたLAN間をイーサネット
インターフェースで接続する技術)やこれらに必要な専用機器が必要となる。


しかし、ウェブ会議ならば、インターネットと接続できればよい。
しかも、初期導入費用は安価で0円のものから数万円のサービスが存在する。
従量課金制、上限時間設定制などサービス各社の料金体系があり、
利用時間や利用人数など自社の運用実態に照らしたウェブ会議システムを
選択すれば、運用コストもテレビ会議システムより安価で導入可能だ。
当社は、テレビ会議、ウェブ会議を使い分けたり、併用してセミナーを行っている。
双方を比較して、機能面や通信速度、画像の質などほぼ大差がなくなっている
というのが実感だ。

 


実は、無料サービスなら、比較的小規模な企業であれば
Skypeでも十分である。いまやSkypeは、知名度も高く、
ビジネス版の有料サービスもある。250名までのユーザ管理もでき、
セキュリティ対策もされているため、当社としては今後さらに期待をしている。
マイクロソフト社の次の一手が楽しみだ。


最近はクラウドでできることが増えた。
現在、自社開発やパッケージを導入しているのであれば、
クラウドサービスへ移行することを検討したらいかがだろうか。
大幅なコスト削減の可能性を秘めているのだ。

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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する
 第4章 今どきのICT活用の実際-コスト削減はここまでできる より転載)