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会社は入ってからが大勝負

今、当社も就職説明会が真っ盛りの時期である。

今年も新たな刺激的な出会いを求めて積極的に会社説明会を開催している。

おかげさまで、年々、ジャストフィットの学生さんが集まりだした
と実感する。

当社のメイン事業のひとつである
アジアで働くことに関心が高くなってきたのである。こういう説明会は、もちろん採用目的が一義ではあるが、
私は、学生を前にすると自分の学生時代はすっかり棚に上げて、
ついつい余計な話をしたくなる。
言うまでもなく、相対している学生全員が
当社の一員として働くことはないわけだが、伝えたいことが沢山あって
ウズヴスする、というのが正直な心境だ。

先日の説明会ではトヨタについて話した。

その時の話も含めて今回は書き進める。
トヨタ社といえば、子供でも知っている超一流会社だ。
昨年までは、学生が選ぶ入社したい会社ランキングの上位の常連だった。
ところが、先日新聞で見た限りでは昨年6位から96位に急降下した。
100位以内はかろうじてキープしたが、まさに大幅ダウン。

こんな記事ひとつでも、学生たちがどういう発想や視点で
会社や社会を見ているのかがつぶさに見てとれる。
今の学生は安定志向といわれて久しい。

だから平時であれば、理工系志望は特に入社したい企業として、
超優良企業のトヨタ社を優先して選ぶ。

もっともな話だ。

では、今回の結果はどういうことか?
私なりに考えてみた。
誰が推論してみてもそんなに的を外すことはなかろう。
確かに世界不況が始まって以来、
トヨタ神話は崩れ去ったかのようなメディアの取り上げ方が目立った。

センセーショナルな出来事として苦難を取りあげ続けている。

社会で長年働いている私たちにはトヨタ社の一時期の不振に見えても、
学生にとっては、ヘタしたら倒産という衝撃的な印象を持ったものもいるのだろう。
私が思うにトヨタが潰れたり中期的にダメになるならそれこそ日本も終わりだ。

世界レベルで見ても超安定企業であることに何ら変化はないのだ。

メディアの影響力に驚きつつも、
一方では少しでも全体を見る、先を見る力がある学生が増えて欲しいと
常々願っている。
また、同時に私たちも学生たちに責任を持って、
社会や会社の事実をバランスよく伝えないといけないと改めて思う。

学生たちに大企業に関して、考えてみて欲しいことを更にいくつか書いてみる。

ひとつは大企業の採用枠が昨年に比べて激減したことである。

学生は喜んでいるだろうか? 
嘆いているだろうか?

ほとんどが、嘆いているのではないだろうか?

しかし、これも事実が見えてくると

「実は採用減は喜ぶべき事かも?」

と気づく。

簡単に説明するとこうだ。

大量に入るという事はそれだけ同期の中だけで考えても競争は厳しい。

まして、10年後を考えた場合、彼らのうちの何人が部下を持てるだろうか?

簡単にわかる極めて厳しい道のりである。

入社枠が狭まって入れない人は、結局いずれ大企業では
通用しなくなる可能性が高かったわけである。

もうひとつ、ストレス社会の実態も知っていて欲しい。

ストレス社会を象徴するかのように鬱病で悩む人は多い。

連日のようにメディアもこの手の情報を発信している。

顧客からの厳しい要求、コンプライアンス遵守、
エスカレートする出世競争、メディアからの厳しい視線などなど。

考えてみたら仕事において大企業は大変な環境といえる。

ストレスが溜まって当たり前だろう。

何も自ら進んで厳しい環境に身をおく、しかも
ミスマッチの確率が高くなっていることを選択しなくても、
自分らしく働くことの選択肢は、他にもあるのにと言いたくなるのである。
今の学生は、視野を広く、少しでも先を見て考えたほうが、得策であろう。

その結果として競争激化の大企業で勝負するも良し、
中小企業で勝負するも良し、アジアで働くも良し。

農業に取り組んでみるのも良い。

選択できる幅がこんなにあるのに
なにも大企業だけ見なくても・・・とつくづく思う。

“入学が困難で、卒業は比較的楽ちん”

日本の大学はこんな風に揶揄されてきた。

実は、今の時代、会社に入ることは全く逆である。

高度成長期の真っ盛り、終身雇用、年功序列の社会では、
入社する会社で人生が決まる比重も高かっだろう。

しかし、今は全く変わってしまった。

会社に入ることは、そんなに高いハードルではなく、
社会で働き続けながら成長する。
これが長くてタフな道のりなのである。

激変する社会に入る際に、どこの会社に入るかは
昔ほど大きな意味は持たないのである。

入社が勝負ではなく、入社してからが勝負である。

激変する社会の中で適応していく力を磨き、
いかに生きていくかが勝負なのだ。

このことを今一度、考えてみてはいかがだろうか?

世の中を見ていると日増しにこの想いが強くなってくる。

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