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今、就職活動中の皆さんへ 本当の社会は見えていますか?

今年は、今までに比べて学生の就職活動は遅く動いていると当社でも実感する。
当社は4月から会社説明会を始めた。
東京と関西で例年実施しているが、TV会議システムも使っている。
その場合、私はベトナムのホーチミンから話をすることもある。
最近のニュースによると5月末で学生全体の3分の1程度の内定が
決まっているという。
会社は社会の入り口のひとつである。
これは以前からの私の持論であるが、
日本が普通にアジアと共存する時代が到来し、ますます、
この考えがより一層確信になってきた。当たり前の話だが、
今の学生が就職活動する場所は、ほとんどが日本の中である。
しかも、短期間に限られた情報、偏った情報を頼りに、
自分に合いそうな会社、入りたい会社を探す。
概ねここ何十年も変わらないオーソドックスな就活パターンだ。
これは自然の流れではあるのだが・・・。学生の皆さん、本当の社会の変化は感じていますか?
見えていますか?

大企業は言うまでもなく、いまや日本の中小企業でさえ、
顧客獲得のためのアジア進出が盛んになってきた。
とりわけ、中国などの諸般の事情も重なって東
南アジアマーケットの獲得を目指して、
進出活動の勢いが加速してきた。

なぜ、日本の企業が海外を目指すか?
その答えはシンプルである。
日本は人口が減っている。
少なくともこの先数十年、外国から移民を受け入れない限り、
人口が減り続ける国なのである。
当然、企業が囲い込みたい日本国内の顧客は減る。
したがって経済規模も縮小する。
働く立場で考えると、これからは日本の企業に就職するとは、
アジアの顧客を相手にする企業に入ることなのである。

今までは日本のほとんどの企業は内需だけで発展してきた。
日本の企業は日本人を相手に商売する仕組み、ノウハウを蓄積してきた。
だから国内での商売は抜群にうまい。
だが、国外の顧客を獲得することが必須の時代になったからと言っても、
日本の企業が海外の顧客を相手に商売するノウハウはないに等しい。
未体験ゾーンなのである。
国内のやり方がそのまま通用するほど甘くはない。
この部分では、すでに韓国などに相当先行されている。

今、日本の企業のほとんどが大転換の必要に迫られている。
江戸時代末期、黒舟がやってきて開国を迫った時に似ているかもしれない。
こういう大転換期は特にそうだが、社会の変化につれて、
俊敏に会社は変化しないと生き延びれない。
就職活動では、会社調査や研究から初めて、会社説明会、面接・・・概ねこういう
オードックスなパターンで会社選びをする。
就職活動の短期間に、会社を幾ら訪問しても研究しても、
向う数十年の社会の変化は見えてこない。

人間はよく、今の時代が幸せかどうか、こんなことを考えたくもなる。
昔と比べても仕方がないものだが、それでも比べたくなるのが人の性。
メディアや世論も概ね、今の若者は就職難であり、先行き不透明で大変だと叫ぶ。
私はそうは思わないし、むしろ反対だと本気で思う。
ひとつ考えてみてほしい。
高度成長期のど真ん中の30年ぐらい前に遡って考えてみよう。
丁度私が大学生になった頃だ。
この頃、懸命に就職活動をして、大企業を目指した人たちのことを。
終身雇用、年功序列という日本的独特の人事システムに乗っかりさえすれば、
一生安泰だったはずだ。
世の中、誰しもそれを疑う人はいなかった。
明るい未来しかその時の日本人は見ていなかった。
その結果どうだろうか?
今、彼らは50歳を過ぎ、大リストラ、競争激化の荒波に飲み込まれている。
果たして、彼らの心境はいかほどか?
私も同世代だけに身につまされる。
誰かが約束したわけではないが、勝手に盤石な日本があると
誰もが信じていた時代だった。

一方、今の若者には鮮明に先がどうなるか見えている
(もっとも、本気で見る気になればの話だが)。
将来、こんなはずしゃなかった、と言わなくて済む様にじっくりと準備はできるし、
砂上の楼閣を見て錯覚することはない。

大学生の就職活動の解禁時期が現行の「3年生の12月」から「3年生の3月」へと
3カ月繰り下げられることが決まった。
2016年卒の学生(今の新2年生)から適用されるとのこと。
これは変化のひとつだと言える。
ただ、残念に思うのは変化が小さすぎることだ。
今の学生に必要なのは、実社会を知る、体験する機会や時間なのだ。
いっそうの事、まだ、日本が余裕のあるうちに、
大学を卒業してから就職活動するという仕組み変えると、
関係者皆に相当な刺激があると思う。
その時間を利用して、海外をめぐる、海外でのインターンも良いだろう。
日本の中であっても、社会を知る活動をするのも、農業の問題を考えるのも良い。

こんな激動の時代、かつ、向う数十年が正確に見通せる時代。
慌てて『就職』する必要もないのではないか。

 

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