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だんだんと日本人がNATOに見えてきた。

アジアビジネスにどっぷり浸かったこの20年。
正直、今のような日本企業のアジア進出ラッシュが訪れるとは
10年前は想像していなかった。
今や日本国内でアジアビジネスのことを話題にしない経営者は
皆無と言っても過言でない。
既に経営においては日常会話となった。
メディアなどもますますアジアビジネス一色。
こういう様子を一言で表せば、
確かにアジアビジネスは日本国内では盛り上がっているのである。 

今回のブログはミャンマーにて書いているが、
ミャンマーブームの過熱振りは皆さんご存知の通り。
大企業の現地調査や視察、
中小企業の団体さんなど異常なくらいの「ミャンマー詣」が急増中。
おかげで需給ギャップが拡大。
ホテルの宿泊料などは高騰。
現地人からは、冗談半分、これは日本のせいだとも言われる始末。
こんな日本の行動を私は以前からやや冷めた目で見ている。
実は、日本人はこんな事を昔から各国で繰り返しているからだ。
これと似たような光景を数年以上前のベトナムでも体験したし、
カンボジアや他の東南アジアの有望国でも程度の差はあれ、
同じようなものである。
熱しやすく冷めやすい、ブームに流されやすい日本人なのである。

仕事柄、アジアビジネスについて講師をする機会が多い。
自分で言うのもなんだが、私が毎回判を押したように話する事が幾つかある。
そのひとつが、NATOの話だ。

No Action Talking Only

日本人は言うだけで何も実行しないという意味の揶揄だ。
私は数年前、ベトナム人からこの言葉を初めて聞いた。

-日本人はダメですよ。
-失望しました。

視察で何回も何社も自社に訪問があったという。
しかし、誰ひとりとしてビジネスを始めない。
もう視察は受けたくないとも漏らしていた。
それ以降、アジアのどこの国でも似たような話を聞くようになった。
私自身、日本人であることが後ろめたくなる今日この頃なのである。

 

もちろん、本当に日本人や日本人の行動が100%NATOかというとそうではない。
人に話する時は、この事は分かって話してきたつもりだ。
誤解もあるし、ちゃんとした理由もある場合もある。
例えば、大企業は決断が遅いという噂。
大企業などは必ずしも臆病で決断が遅いわけではなく、理由がある。
今の大企業の安全指向の経営方式から考えると決定に時間が必要なのも当然。
また、たった数年前は余裕もあった(それが錯覚だったとしても)。
今ほどアジアに必死になる必要もない企業も多かったのだ。
いずれにしても、アジアには本物の人、本物の経営者に来て欲しい私としては、
この先、日本人はやっぱりNATOだったと言われないことを切に願ってきた。

 

私達はベトナムや東南アジアの国々で現地でビジネスをする比重が
急速に拡大している。
その中で現地の経営者と仲良くなるし、
現地の生活実態やビジネス実態に少しずつ精通してくる。
すると、ここはベトナムであり、カンボジアだという認識が自然になる。
日本と比べてビジネスのことを考える発想も消えてくる。
一般の人が、ある国に移住してローカルな生活に慣れることとは少し意味が違う。
ビジネスを考え行動する時の視点や着眼点が現地基準になる事なのである。
こういう感覚が強くなって、ふと、NATOのネタを思い出してみる。
最近、本気で日本人はやっぱりNATOだと思うようになってきた。
NATOの日本人と付き合うと正直疲れる。

ちなみに、私が今思っているNATO的日本人とはこんな感じだ。

・すでに書いたが、いつまでも視察を繰り返す経営者達。これは典型的。

・現地の日本人にやたら頼ろうとする。
 こういう人は人の迷惑も顧みず質問攻め、しかも似たような質問を何回も。
 全く聞くことはタダだと思っている。
 度が過ぎる人には、教える情報やノウハウはリスクテイクして行動した結果、
 タダで提供できるわけないと伝えざるを得ない。
 百聞は一見にしかず。
 こういう人達は自分でやってみれば良いのだ。

・日本の今の商売基準、収益モデルでアジアのビジネスを考える。
 こんな人もNATO予備軍。
 ここは今の日本とは違うと、私は声を大にして言う。

・「日本にどうやって儲けたお金を持って帰れますか?」
 これも多い質問。
 「現地で儲けて、現地に再投資してまた現地で儲け、
 そして現地に貢献してはどうですか?」
 私の答えはこれが基本。

・人件費はいくらですか?これも定番質問。
 経営コストの最大項目だから分かりますけど、
 これしか考えてない経営者も本当にいる。
 勘弁してくださいと言いたい。

挙げだしたらきりなくある。あと幾つか。

・日本の今のマーケット理論を振りかざす。
 その商圏がどうやって発展しているかも知りもせず、
 だった数日来ただけで、ここでは商売難しいねと。
 なんのことは無い。今の日本と比べているのだ。
 これでは、アジアの1ヵ月後の変化すら予想できない。
 世界のどこに行っても勝負できる場所は無い。

・最後にもうひとつ。
 日本のビジネス基準で何事も上手くいくと思い込んでいる。
 クレーマー率世界一の日本人だから少なからず仕方がない部分もあるが、
 最終的には、現地でサポートしている日本人のせいにする。
 だったら、自分で一からやってみてはどうか。
 こう言うしかないのである。

全般的に、人に頼る。人のせいにする。
自分に都合の良いチャンスばかり見てリスクが察知できない。
そもそも、ハイリスクハイリターンであることを忘れている。
だから、先んじることが最大のチャンスであるこういう場所で勝負できない。
結局、一番かけているのは温室過ぎる日本にいて、
日本の外で挑戦する勇気を失ってしまった。これだと思う。

ここミャンマーでIT企業を設立し、
活躍されているミャンマーDCRの小林氏。
当社新刊の「アジア人材活用のススメ」にも寄稿して頂いたが、
こういうくだりがある。

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最近の日本の視察は4Lと呼ばれています。
『Look(見て)Listen(聞いて)Learn(学んで)Leave(立ち去る)』のことです。
つまり、 視察だけ来て、何も投資をしないことを揶揄しているのです。
やるならば、覚悟を持ってミャンマーと向き合ってもらいたいと思っています。
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4L…。
確かにNATOにそっくりだ。
私は、アジア中、世界中で日本人はNATOと言われたくない。
そんな人は今は出てこなくて良い。
本物だけが動くのであれば日本も今すぐにでも見直されると思う。
そんな今日この頃である。
このネピドーの通信環境の悪さ。
逆にこれからの変化を考えたらワクワクせずにはいられない。

 
 

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