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久しぶりの香港で、出会った素晴らしい経営者

先週、久しぶりに香港に出向いた。関空から約3時間強。
東南アジアと比べても香港はとても近く感じる。
前回、香港に来たのは10年近く前になる。
香港に久しぶりに来て一番驚いたのは、超建設ラッシュの光景。

 

  

もうすでにできあがった大都市という印象を持っていただけに、あちらこちらの
大型建設現場を目の当たりにすると、香港パワーの凄さが身に染みる。
発展著しい新興国の大都市と日本を比べると一目瞭然。
工事用のクレーンの数が圧倒的に違う。

 

 

  

日本で大型建設は都心部の再開発ぐらいしか今はない。
もともと、香港は香港島の山の斜面に超高層ビルが密集している光景が圧巻だが、
少し郊外にも独特な天に突き刺すような細長い高層マンションが至る所で開発中。
香港をよく知る日本人パートナー曰く、価格はどんどん値上がりしているとのこと。
今の香港経済は、中国本土からの膨大な投資や観光客の増加で、活況を呈している
ようである。
1997年の香港返還からはや20年近くが経つ。
その当時は、完全に中国化して自由度を失うのではと囁かれたが、アジアの大都市
シンガポールにも勝るとも劣らない貫禄の大都市の雰囲気に、心が躍るのは
私だけではないはずだ。
中国の富を背景にこの大都市の発展はまだまだ続きそうだ。
チャイナパワーの凄さを垣間見たような気がした。

仕事がら、建設工事の現場にも関心がある私としては、竹の足場で工事している様を
目の当たりにすると「大都市だけどアジア」と妙に納得してホッとしている自分に気づく。
構造上も大丈夫かと思ってしまう造りである。
このあたりが、日本の大都市東京とは決定的な違いだ。絶対に地震が起こらない
想定だからできることであるが、日本の建築物に慣れた私にはとても心許なさを感じる。
専門的なレポートによると、高い品質を誇る日系建設企業も高度な土木技術や
環境対策などを武器にして奮闘しているようである。
フェアな市場が特徴の香港だけに世界から建設企業が参入し、厳しい競争が
繰り広げられている。
建設技術者の不足は慢性的かつ深刻な課題であり、シンガポールなどは外国人労働者に
大きく依存している。
香港でも建設ラッシュのなかで労働力不足はとても大きな課題となっているようである。
東京のオリンピックを目前にした一時的な需要とは違い、バックに中国や世界の富と
欲望を感じる香港の建設ラッシュは、この先も尽きることなく続いていきそうに思う。
建設労働者の不足が足かせになって、投資が停滞するようなことも起こり得るかも・・・と
日本とのギャップを実感し、新たな発見を得た。

日港のビジネスでは、貿易の関係性が強いが、特に今の大きな課題のひとつ、
農林水産物の海外輸出に関しては、香港は日本の最大の輸出先であり、
日本食の人気は高いことでは有名である。
それも相まって駐在の日本人にとってはとても住みやすい街のひとつである。
しかし、私は、今回も日本のパワーをあまり感じることはできなかった。
私はベトナムでは韓国人に間違われるが、ここでは中国人に思われていたようだ。
統計情報によると、今、香港に駐在する日本人は約2万数千人ほど。
増減を繰り返しながら、再び日本人が増える傾向にはある。
しかし、日本の電化製品が絶好調の頃にはもっと日本人の存在感はあったようで、
少し寂しい限りである。
日本が元気なころの昔の香港で活躍したシニアの方々は、
香港での武勇伝を楽しそうに語る。
日本が全盛期のビジネスパーソンの活躍ぶりが今さらながら懐かしい。
想像するに、今の中国と同じようにジャパンマネーを背負った日本人のビジネスは
アグレッシブでダイナミックだっただろうな・・・と思える。
そういう意味でも、これからの日港の関係性の進展に興味津々である。

ところで、国籍問わず、どこにでも刺激を受ける経営者はいるものである。
今回もとても印象に残る2人の香港人の経営者に会った。
一人は、HKTDC(香港貿易発展局)のトレードフェアで出会った
VODAPRUF PTE LTDの王さん。

 

 

 

今回の訪港のひとつの目的はHKTDC主催のトレードフェアにVIPバイヤー
として参加することであったが、バンコクやドバイのトレードフェアとは違い、
香港は、圧倒的に香港・中国企業の存在感を感じる場所だった。

 

建設・環境関係の企業発掘・情報収集を目的にピンポイントでブースを巡った。

 

  

その中でも、一番経営者としての情熱とポテンシャルを感じたのが王さんである。
彼は32歳、香港人で今、シンガポールに住んでいる。
3年前に創業し、コンクリートに混ぜる軽量の建築骨材を開発し、今、
中国やマレーシアに販売している。製品開発はマレーシアでも行っているとのこと。
すでにグローバルだ。
これを日本や世界に展開していきたいと意気込む。
弊社がベトナムで活動していることを伝えると「ぜひ、連携しよう」とすっかり意気投合。
ベトナムでも建設ラッシユで近い将来有力な商品になると考えていて、
香港、日本、シンガポール、ベトナムを舞台に協業することを約束し、
シンガポールで再会を約束して別れた。
王さんのプレゼン力の高さとアグレッシブさには感心させられた。
この先もずっと付き合っていきたいと思う経営者である。

 

実は、この展示会では環境対策も大きなテーマになっていて、
香港、中国系の企業が自慢の技をあちらこちらで、これでもかとばかりに披露していた。

 

  

中国勢の短期間での進化に一瞬、気圧されそうになるが、
この分野こそ、日本企業の超得意領域と思っている私としては、
まだまだ至るところに日本企業が勝負できるマーケットがあると再認識できた。
日本企業は内弁慶ではいけない。

 

もうひとりの経営者は壁面緑化ビジネスで香港に変革を起こすアルビンさんである。
実は、お会いするのは初めてでなく数か月前にスカイプで面会はしていたのだが、
生で会うアルビンさんは、本当にアグレッシブで情熱的で魅力的な人であった。
日本のサントリーが開発した『パフカル』という新素材を利用して、
数年前から始めた壁面緑化ビジネスですでに香港でNo1の地位にのぼりつめた。
アルビンさんは、Midori Creation International Limitedの
現地責任者である。
香港では、オフィス、マンションなど次々と開発される新築の建築物には、
壁面緑化を取り入れるケースは多いと彼はいう。
したがって、新規需要が次々と発生する。

 

  

    

地球環境にも優しい緑化ビジネスは、世界の都市でもニーズは大きい。
そう力説する彼の想いに共感する。
2020年、東京オリンピックの機会に東京から世界に緑化ビジネスを
拡げるのがビッグチャンスでもあるし、絶対重要と熱く語る。

   

ここで簡単に、アルビンさんが推進する緑化ビジネスの概要を紹介する。
以下は、サントリー社のHPから引用させていただく。

「サントリーは、環境緑化事業『midorie(ミドリエ)』を本格的に展開するため、
環境緑化部を2008年3月に新設し、環境緑化ビジネスに本格参入しました。
この『midorie(ミドリエ)』の柱となる壁面緑化システム<花のかべ><森のかべ>は、
弊社が独自に開発した新素材『パフカル』を土の代わりに使用した新しい緑化システムです。
土を使わないことで、(1)清潔 (2)軽い (3)植物がよく育つ (4)取り扱いが簡単
という特長を実現しました」

また、「街を緑へ」というメッセージを込めて緑のアトリエをイメージして名付けたとある。
なんともお洒落な話である。
今や環境立国としても世界の期待が集まる日本の誇る技術や価値・文化として
MIDORIを世界に広げたいものである。
おもてなしだけではなく、「緑(MIDORI)」を世界に発信しよう。
アルビンさんのこの発想はとても素晴らしい。
ぜひ、少しでも力になりたいものである。
彼の発想はスケールが大きい。
美味しいローカルの香港料理を食べながら、彼の話を聞いていると本当に実現可能に
思えるのが、彼の凄さでもある。

 

 

そして、話は経営論にまで展開する。

「リーダーシップとはビジョン×実行力×影響力」

 

 

そう記された英語のメモ書きを見せながら、話をする彼の熱さがビンビンと伝わる。
ベトナムでの展開を協力させていただくことになっているが、
ますます、気合が入った香港の夜であった。

弊社が主戦場とするベトナムと日本、そこに香港を連携させることがとても価値を
生むことだと実感できた。
ベトナムのハノイからだと香港までは飛行機でわずか2時間弱。
ハノイからホーチミンと同じぐらいだ。
日本企業にとって、今のベトナムをはじめとした東南アジアのチャンスは
とてつもなく魅力的。
しかし、今回久しぶりの香港で感じたことは、やはり、香港は世界とつながっている。
特にアジアは近距離でお互いが影響を受けあうマーケットである。
香港がつながることで、新たなマーケットの可能性を感じるとともに、
香港・中国企業のライバル達のベンチマーキングにもとても有効だと改めて感じた。
しかし、ビジネスに有効な情報や出会いはあふれているが、
自分で取りに行かなければ宝の持ち腐れである。
肝に銘じたい。

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